書評

百姓は資本主義のカウンターカルチャーたりうるか

『反逆の神話』を読み終わった。 反逆の神話〔新版〕 「反体制」はカネになる (ハヤカワ文庫NF) 作者:ジョセフ ヒース,アンドルー ポター 早川書房 Amazon いやぁ面白かった。自分の考えていたことをキレイに言語化してくれた一冊だった。こういうのを読みた…

なぜ芥川賞を受賞したのか不思議な作品『しんせかい』

現在、芥川賞受賞作を文字通り片っ端から読んでいる。 新しいほうから読んでいて昨日、山下澄人の『しんせかい』を読み終わった。 しんせかい(新潮文庫) 作者:山下澄人 新潮社 Amazon 読み終わってまず、なぜこの作品は芥川賞を受賞したのだろうと不思議に…

日本屈指の総合小説 『邪宗門』

2週間かけて高橋和巳の『邪宗門』を読み終わった。 邪宗門 上 (河出文庫) 作者:高橋 和巳 河出書房新社 Amazon 邪宗門 下 (河出文庫) 作者:高橋 和巳 河出書房新社 Amazon 数年前に新聞記事で『邪宗門』という小説の存在を知ったが、そのおどろおどろしいタ…

中学生の発想を持ったまま大人になるということ

図書館の、普段は行かないジャンルの本棚をうろついているとなかなか面白い本に出会うことができる。この本はそのようにして出会った。 深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと 作者:スズキナオ スタンド・ブックス Amazon タイトルにある深夜高速バス…

邦画史上最高にクレイジーなホラー映画 『鉄男』

20年ぶりに再鑑賞。 う~ん、クレイジーな映画だねぇ。海外では一部にカルト的な人気を誇っている。 鉄男 ニューHDマスター [Blu-ray] 田口トモロヲ Amazon 「やつ」は鉄パイプを自分の脚に組み込もうとしたが、入れた箇所にうじが湧いて驚いて表に飛び出す…

森林は理想的な福祉社会だった

『樹木たちの知られざる生活』を読み終わった。 樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声 (ハヤカワ文庫NF) 作者:ペーター ヴォールレーベン 早川書房 Amazon 自然とか森林とか、山とかに興味がある人は絶対に読んだほうがいい! 木についての見…

『黙殺』を読んで泡沫候補や選挙への見方が変わった

新聞で畠山理仁の『黙殺』が紹介されていて興味がわいたので読んでみた。 黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い (集英社文庫) 作者:畠山理仁 集英社 Amazon 一言でいうと、いい本だった。 自分は、それまでの考え方を改めさせてくれる本をいい本だと…

印象の悪かった『海辺のカフカ』を数年ぶりに再読した

村上春樹『海辺のカフカ』を再読。 前回から5年か6年ぶりに再読した。 海辺のカフカ(上下)合本版(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 村上作品は何作品か読んできたが、『海辺のカフカ』の読後印象は一番悪かった。 数年前に読んだとき、この作品は…

この国には本当にいろいろなものがある、だけど希望だけがない。

村上龍の『希望の国のエクソダス』を読み終わった。 希望の国のエクソダス (村上龍電子本製作所) 作者:村上 龍 村上龍電子本製作所 Amazon 全国の中学生100万人が集団不登校をし、北海道に希望の国を作ろうとする話。 インターネット上に中学生だけのコミュ…

現実もたいがいやな

映画『感染列島』を観た。 新型インフルエンザが猛威を振るうって話。 感染列島 妻夫木聡 Amazon 他のユーザーも言ってるように、まぁつっこみどころの多い茶番劇みたいな作品。 マスクしてないし、感染して死にかけの女子中学生の治療中に彼氏が乱入してく…

開会式見ずにエイリアン観てたんだが、エイリアンとコロナって似てるよね

なんとなくエイリアン観たくなって4まで一気に観た。 いやはやどのシリーズも面白かった。 それもそのはずで、担当した監督がリドリースコット、ジェームズ・キャメロン、デイビッド・フィンチャー、ジャン・ピエール・ジュネと錚々たるメンツだもんなぁ。 …

『ノマドランド』観てむしろ絶望したんだけど

『ノマドランド』を観た。 ノマドランド (字幕版) フランシス・マクドーマンド Amazon 2021年のアカデミー賞受賞作。前々から観たかった作品でU-NEXTにて配信されていたので視聴した。U-NEXTの見どころで、車上生活を送る女性を通して、現代を生きる希望を描…

『三体』の軽インフルエンザって、絶対コロナのことだろ

中国のSF作家劉慈欣の『三体』を読んでいる。 三体Ⅱ 黒暗森林(上) 作者:劉 慈欣 早川書房 Amazon すごい小説だよ、ほんとに。 この本の第二巻の上に、軽インフルエンザっていうウイルスが出てくる。 主人公のルオ・ジーだけを殺害するために開発された人工…

日本語が世界を平和にするこれだけの理由

知り合いに薦められて。 面白かった。日本語と英語などの欧米語の言葉の違いについて。 日本語圏では人に会ったら「おはよう」とか「こんにちは」と言い、英語圏では「How are you?」とか「How do you do?」という。何が違うかと言うと、日本では言葉の中に…

百姓論②

仕事まで時間があるので最近読んだ本をまとめておく。 「これからどう生きるのか」ということを経済的に考えている。 まず、瀧本哲史の本を2冊読んだ。 彼の主張はこんな感じ。 現在の資本主義経済はグローバル化していて過酷な競争状態になっている。 そん…

なぜ人はカルトに惹かれるのか ―脱会支援の現場から

瓜生崇著『なぜ人はカルトに惹かれるのか ―脱会支援の現場から』を読む。 なぜ人はカルトに惹かれるのか 脱会支援の現場から 作者:瓜生 崇 発売日: 2020/05/15 メディア: 単行本(ソフトカバー) 小説や学術書、雑誌などを読んでいて胸を打つ文章があると、…

中沢新一の本は、読んでるとワクワクする

この人の本を読んでると、心がワクワクしてくるんだよねぇ。 学術系の本って、へぇ~って驚くことはあっても、ワクワクしてくることってあんまりない。でも、この人の本だけは特別で、ワクワクしてくる。 どうしてなんかなと考えていると、一つは学際性にあ…

『ホームレス ニューヨークと寝た男』 ハンサム中年独身男性のドキュメンタリー映画

ホームレス ニューヨークと寝た男(字幕版) 発売日: 2017/10/04 メディア: Prime Video 若いころはモデル、今はモデルを撮る写真家。 華やかな世界に身を置き、一見ホームレスには見えない容貌の中年独身男性マークは、不法侵入したビルの屋上で寝起きして…

今さらながら新海誠にはまった

うーむ、はまってしまいましたなぁ。 『天気の子』を2回観て、『君の名は。』を3回観て、『言の葉の庭』を観て、小説『君の名は。』を読み終わった。 僕はあまり誰か特定の作家にはまることはないのだけど、この方の世界にははまってしまったねぇ。 映像が…

『新聞記者』は久しぶりに胸を衝く邦画だった、松坂桃李がすごかった

新聞記者 発売日: 2019/10/23 メディア: Prime Video 普段あまり邦画は観ないのだけど、韓国人の女優がこの作品で日本アカデミー賞の主演女優賞?を受賞されてて印象に残っていたので観てみた。 邦画では本当に久しぶりに、ぐぅーっと胸に迫るものがあった。…

『スターウォーズ』をエピソード4からではなくエピソード1から観た感想(ネタバレ注意)

STAY HOMEということでね、スターウォーズシリーズ観ましたけれども。 エピソード1~6まで観ました。面白かったですね。 当方、アナキンスカイウォーカーとかダースベイダー、チューバッカ、C-3PO、R2-D2とかいう登場人物の名前は知っていたけれど、物語の…

なかなかないタイプの映画『15時17分、パリ行き』

15時17分、パリ行き(字幕版) 発売日: 2018/05/19 メディア: Prime Video いやー面白かったね。 アメリカのどこにでもいる普通の若者たち三人が、パリ行きの列車でテロを未然に防いだ話。 現実に起こった話で、何がすごいって登場人物のほとんどを本人たちが…

中動態の世界と、神々の沈黙について

國分さんによる著書『中動態の世界』はなかなか面白かった。 中動態とは、数千年前の世界では一般的だった態のことで、状態や状況を説明する。 matsudama.hatenablog.com 『中動態の世界』を読み終わった後しばらくして、以前読んだ『神々の沈黙』という本を…

『エクソシスト』って哲学的にも価値ある作品だよね

この前報道で、俳優のマックス・フォン・シドーが亡くなったことを知った。彼の出演作に『エクソシスト』があって観てみようかと思って借りてきた。 エクソシスト ディレクターズカット版 (字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video たぶん『エクソ…

中動態の世界について 能動/受動の向こう側へ

以前から読みたかった本だが、なかなか手を付けられなかった本。ようやく「よし、読もう!」という気になり手に取った。 中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく) 作者:國分功一郎 発売日: 2017/03/27 メディア: 単行本 難しかったが、読み…

奇妙な死体のとんでもない事情

奇妙な死体のとんでもない事情: 2万人を検死した法医学者の事件ファイル 作者:巽信二 発売日: 2019/12/19 メディア: 単行本 いやー、不謹慎かもしれないけど、めちゃくちゃ面白かった。 著者は法医学者。これまでに解剖してきた遺体を通して彼が見ている世…

『しょぼい起業で生きていく』を読んで、起業に対するイメージがガラリと変わった

『しょぼい起業で生きていく』を読んだ。 しょぼい起業で生きていく 作者:えらいてんちょう 出版社/メーカー: イースト・プレス 発売日: 2018/12/16 メディア: 単行本(ソフトカバー) 面白かった。 僕が今まで考えてきたことと似てるし。 企業で毎日朝から…

84歳のAV女優の記事を読んで生きるのがラクになった

昨日週刊朝日を読んでいたら、なんと84歳のAV女優の記事が掲載されていた。 週刊朝日 2020年 1/17 号【表紙:木村拓哉】 [雑誌] 作者: 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2020/01/04 メディア: 雑誌 いやはや、すごいよねぇ・・・。 84歳でヤッてるって…

どうして大器は晩成するのか

偉大な人間は遅れて開花するというのが大器晩成の意味だけど、どうして大器は晩成するのか。 内田樹、釈徹宗の『日本霊性論』を読んでいると、面白い話が紹介されていた。 日本霊性論 (NHK出版新書) 作者:内田 樹,釈 徹宗 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: …

売上を、減らそう

売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放(ライツ社) 作者:中村朱美(佰食屋) 出版社/メーカー: ライツ社 発売日: 2019/06/14 メディア: 単行本 ステーキ丼を100食限定で提供するお店を経営する人の本。 100食限定とすることで、飲食…