AIは日本人になれるのだろうか

今日、仕事で倉庫の片づけをしていたときのこと。

Mさん「この蜂の巣箱持ってかえらない?」 

俺「そういえばミツバチが倉庫の前飛んでましたよ」

Mさん「…」

俺「はい、持ってかえります!」

Mさん「まぁここはべつにハチミツいらないからね」

 

あとで、このやりとりを思い返してみると、かなり高度なコミュケーションだなぁと思った。

まず、Mさんの提案に対して、自分はかなり遠回しに断った。ミツバチが周辺を飛んでいたのだから、巣箱を置いてハチミツを作ったらいいんじゃないかと。言外にそうしたニュアンスを含ませて、やんわりと断る作戦。

Mさんはそれに対して微笑みながら無言。いやここには必要ないから持っていってほしいんだけどという無言の圧力。それを察して、なら持ってかえりますと返す。

 

言葉そのものに含まれる言葉以上の意味を察しないといけないのが日本であり、だいたいの日本人はこれを当たり前にこなしている。よくよく考えたら、すごいことだなと思った。

 

6年くらい前のこと。

温泉で受付の仕事をしていたら外国人カップルがやってきた。隣にいた同僚がカップルに「スタンプカードは、いりますか?」と尋ねた。このカードは来店するたびにスタンプが押され、何個か貯まると無料券として使える。

カップルは日本語が分からないので、翻訳アプリが入っているスマホを差し出して、ここに喋ってとジェスチャーした。もう一度「スタンプカードは、いりますか?」と同僚が喋ると、スマホには「Do you have a stampcard?」と表示されていた。カップルは「No.」といい温泉に入っていった。

あとで思い返してみて、「スタンプカードを持っていますか?」という翻訳はおかしいなと思った。「いりますか?」は、「have」ではなく「want」として訳されるべきだったのだ。もし「Do you want a stampcard?」とスマホに表示されていたら、カップルは「Yes!」とこたえていたかもしれない。

同僚は、やってきた外国人カップルを見て、おそらく初めての来店だと推測しただろう。初めての来店ならスタンプカードを持っていないだろうから、スタンプカードは欲しいかという意味で「スタンプカードはいりますか?」と聞いた。ここらへんはあくまで推測だから間違っている可能性はある。もちろん初めてではない可能性もあるからスタンプカードを持っている可能性もある。それは分からない。だけど、雰囲気からしておそらく初めての可能性が高いから、欲しいかと聞いた。

こういうなんとなくの雰囲気から判断して言葉をチョイスしているわけだが、ここらへんの言葉選びがAIには可能なのだろうか。ChatGPTやあるいは今後の発展したAIに、こういう日本人が当たり前のようにこなしているコミュニケーションがとれるのだろうか。

そういうことを帰り道に考えた。