【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち
- 作者: 新井紀子
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2018/02/02
- メディア: 単行本
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ロボットは東京大学に合格できるのか!? というキャッチ―なフレーズで話題になった著者。
以前から読んでみたかった本で、今年のビジネス書大賞に選ばれている。まだ7月なのに、今年のビジネス書大賞を決めてしまっていいのだろうか?
話題になるだけあって面白く読み応えがある。まだ読んでいる最中だけど、印象に残ったことをまとめておく。
AIはMARCH合格レベル
東大合格を目指したロボット、「東ロボくん」は2016年の時点でMARCH合格レベルにまで達した。
MARCHとは、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学の5つの大学のこと。国公立大学では、全国の国公立大学172のうち、23大学で合格レベルに達した。
今のAIはけっこう高いレベルまで来ているんですねぇ。
この事実を見て、著者は大きな警鐘を鳴らしている。
AIがすでにMARCHレベルに到達しているということは、それ以下のレベルの子たちはまともな仕事にありつけないということになる。普通の仕事はAIにまかされ、単純な労働にしかつけない。
一握りのトップクラスがAIを操ってどんどん裕福になる一方で、MARCH以下のレベルの人たちは単純な仕事にしかつけず貧乏になっていく。このような格差社会が訪れる可能性があると著者は危惧している。
人間はすごい
この本を読んでいると、人間が当たり前のように行っていることは、本当はとんでもないことなんだと気づかされる。
今、目の前にはパソコンがあって、マウスがあって、本があって、机があって、ペンやらタオルやら服やら・・・がある。
ぼくたちは当たり前のようにこれらを認識する。これを機械に認識させようと思ったら、とんでもない労力がいる。ぼくたちはモノが目に入った瞬間に、それを一瞬で認識する。これはとんでもない能力なのだ。
あと、言葉ね。
ぼくたちは他者と当たり前のように言葉を使ってやりとりしているけど、これも機械からすればとてつもなく難しいことだ。
著者の新井さんによれば、AIは「意味」を理解できない。
siriなどとのやりとりを見ていると、機械は意味を理解しているように思ってしまうが、あれはこう話しかけられたら、こう答えるというふうにプログラムされているだけで、機械が意味を理解しているわけではないらしい。
僕の以前の経験をふまえれば、AIは文脈(あるいは空気)も理解できない。
僕が以前働いていた娯楽施設に中国人観光客がやってきた。
彼らは日本語を理解できないようで、スマホを差し出して「ここに話しかけて」というジェスチャーをしてきた。スマホが日本語を英語に翻訳してくれるらしい。
うちの施設には、来店するたびにポイントが貯まるスタンプカードがある。
それが欲しいか尋ねるために日本語で
「スタンプカードはいりますか?」とスマホに話しかけた。
スマホの画面には
Do you have a stampcard?(スタンプカードを持っていますか?)
と出てきた。
彼らは、
No. と答えた。
後で、あの翻訳は間違っていると気づいた。
本当なら、
Do you want a stampcard?(スタンプカードを欲しいですか?)
と表示されるべきだったのだ。
普通に考えて中国人観光客は初めての来店だ。スタンプカードを持っているはずはない。だから「スタンプカードを持っていますか?」という質問はしない。
もし、スマホに「Do you want a stampcard? 」と表示されていれば、彼らは「yes」と言っていたかもしれない。
ぼくたち人間は周囲の状況をふまえて言葉を選ぶ。もちろんミスはある。だからKY(
空気読めない)という言葉が流行ったりした。しかし人間は、特に忖度する文化を持つ日本人は、文脈をかなり意識して言葉を発する。
機械にはこういう芸当ができない。
機械が文脈を理解できる日は来るのだろうか?
AIは将棋や囲碁の世界チャンピオンに勝てるから、人間のできることなど簡単にこなしてしまうと思いがちだけど、実は人間が日常で当たり前にやっていることはAIにとってはとんでもなく難しいことなのだ。
著者の新井さんは、東ロボくんの実力、AIにできることできないことを述べた後、日本の教育について述べていく。
教育のことについてはこれから読んでいく。楽しみですねぇ。