邦画史上最高にクレイジーなホラー映画 『鉄男』

 

 20年ぶりに再鑑賞。

 

 う~ん、クレイジーな映画だねぇ。海外では一部にカルト的な人気を誇っている。

 

 

 「やつ」は鉄パイプを自分の脚に組み込もうとしたが、入れた箇所にうじが湧いて驚いて表に飛び出す。そこへちょうど車がやってきて主人公の男がひき殺す。男は「やつ」の怨念によって鉄男へと変貌を遂げていく…

 

 男はひき殺した次の日、顔の頬から金属片が出ていることに気付く。

 これ、怖いよなぁ。少しずつ、肉体の内部が鉄に変わっていく恐怖。「やつ」の怨念から逃れることはできない。

 しかし狂っているのは「やつ」だけではない。「やつ」はひき殺されたあと、男と同乗していたガールフレンドによって埋められる。このカップルも狂っていて、ひき殺した「やつ」を埋めたその横で、青姦し始めたのだ。

 

 たぶんそれで「やつ」の怨念は倍増したのだろう。主人公の男のアソコはドリルに変えられてしまう。家で女とヤろうとしたとき、男のドリルは高速回転してちゃぶ台をぶち破ったのだった…そして、女も鉄女へと変貌していく。

 

 「やつ」は死んでいなかった。

 ここで男は「やつ」と対峙する。鉄男になった主人公と、超能力を持った「やつ」。「やつ」は鉄男を追いつめたが、最後の最後に、「やつ」は鉄男の屹立した高速回転ドリルをぶち込まれ敗北する。そして、全身が鉄になった男のなかに飲み込まれていったのだった…

 

 合体した鉄男と「やつ」。

 テーゼとアンチテーゼはアウフヘーベンジンテーゼとなった。

 次なる野望は世界を鉄の藻屑へと変えること。彼らは世界を鉄くずに変えるべく走り始めたのだった。

 

 

 感想

 

 普通のホラー映画は、怨念を持った霊が次々に人を呪い殺していくというものである。つまり、怨念は外的なのである。しかし「やつ」の怨念は、ひき殺した男の内部を徐々に鉄へと変えていくという内的な要素を孕んでいる。こちらのほうが怖いと思うのは筆者だけだろうか。

 『リング』の貞子や、『呪怨』の伽椰子は、手当たり次第に人を呪い殺して満足する自己満族野郎である。しかし「やつ」は違う。自分を殺した男を徐々に鉄男に変えていくという復讐を果たしながら、最終的には合体し世界征服をもくろむのである。実に哲学的である。

  たった67分の映画なので、ぜひ観て欲しいと思う。