『黙殺』を読んで泡沫候補や選挙への見方が変わった

 新聞で畠山理仁の『黙殺』が紹介されていて興味がわいたので読んでみた。

 

 

 

 一言でいうと、いい本だった。

 自分は、それまでの考え方を改めさせてくれる本をいい本だと思っている。そういう意味で、この本は選挙についての自分の考え方を変えてくれたのでいい本だった。

 

 この本は、いわゆる泡沫候補に焦点を当てた本である。

 当選しないと分かり切っているのに出馬している候補のことを泡沫候補というが、彼らの人となり、なぜ選挙にでるのか、どのような政治信条を持っているのかなどについて、著者が迫っている。

 

 

 著者はなぜ泡沫候補に思い入れを抱き、このような本を著したのか。

 それは、有権者にちゃんと情報を与えるべきだと考えているからである。

 選挙に関する報道を見ていると、メディアが報道するのは有力候補ばかりである。

 ライターとしてメディア側に属する著者は、そういうメディアの姿勢に批判的である。立候補者はみな安くない供託金を払い、立候補している。立場は平等なはずなのに、報道されるのは有力候補者や名が通っている有名人ばかりである。それは選挙のありかたとしておかしいのではないか。ということで、著者はこの本で、いろいろな泡沫候補に迫っている。

 

 最初に出てくるのは、マック赤坂


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サムネイル画像見ただけで、「あ、こいつはヤバい…」となる。

 

だがなぜ、マック赤坂はこんなふざけた格好をして出るのか?

 

それは選挙のシステムと関係がある。

すでに述べたように、立候補者に対するメディアの報道には明らかに不公平がある。そのなかで、有権者の印象に残るためには、こういう奇抜なパフォーマンスをするしかないとマック赤坂は言う。

 

私が壊したいのは、体制、常識、コメントばかりして行動できない人。そのすべてを壊したい。政見放送も壊したい。だからNHKで流れる政見放送でスーパーマンのコスプレをやる。NHKは日本の保守的な部分、とんでもなく常識的な部分だ。しかも、NHKに出れば日本人はコロッと信用する。おれはNHKという権威に対する過度な信頼も壊したい。何も考えずに信用してしまう日本人の無意識を壊したい。それを一旦壊したら、瓦礫の中から何かが生まれる。そこなんですよ、私の原点は」

 

 これまでマック赤坂は選挙に出てくる変わった人だという認識だったが、この本でマック赤坂のことを知ると、既得権益にしがみついて私腹を肥やす国会議員や地方議員よりよっぽどまともではないかと思った。

 

 日本の政治家、特に国会議員がひどいのは、竹中平蔵みたいな国民のことより金にしか目がない連中や、二階みたいな派閥内の権力にしか興味がないじじいに振り回されて本来の政治ができないからである。

 現在の国会議員は、政治家としての資質があるから当選したのではなく、地盤や党によって推されているから当選できたような連中ばかりである。だから、当選したら、自分の信条によって仕事できず、党の幹部の傀儡になり下がっている。

 五輪大臣の丸川や、総理大臣の菅でさえ、言いたいことも言えず、壊れたラジオのように同じことばかりしゃべっていた。しがらみが強すぎて、何もできないのだ。

 どれだけ優秀であっても、しがらみの強すぎる組織に操られているなら意味がないではないか。

 

 自民党だけでなく、他の政党も多かれ少なかれしがらみがある。

 そうしたなかで、組織に頼らず、自分一人で立っているマック赤坂のような泡沫候補のことを、著者は敬意をこめて、無頼系独立候補と呼んでいる。

 

 

 選挙のありかたとして問題があるのはここなのである。

 党に推薦されれば、有力候補として立候補でき、当選できる可能性が高い。だが当選しても、組織のしがらみにがんじがらめにされ国民のために仕事できない。

 一方で、無頼系独立候補として立候補しても、メディアにはまったく報道されず有権者に認知してもらえない。だからマック赤坂のような奇抜な言動をとる者が現れる。

 

 職業にもっとも多様性がないのは、政治の分野だろう。

 名古屋市長の河村や、二階や麻生を見ても分かるように、このじじいどもはひと昔の価値観で生きている。しかし問題なのはいつまでたってもこうしたじじいが当選してしまうシステムにある。結局選んでいるのはわれわれなのだから。

 

 だから、著者が本で主張しているように、立候補者すべてがもっと平等に扱われる必要があるのだ。他国のように、供託金をもっと少なく設定して、有権者がもっと立候補できるようにしたり、有力な立候補者だけでなく、すべての立候補者が公開討論会に参加できるようにし、それをメディアがちゃんと報道する。そのようにして有権者に情報を与える。

 

 日本の政治がまともになるためにも、この本はもっと注目されるべきだ。