久しぶりに観ごたえのある面白い邦画『はりぼて』を観た

ときの人を紹介する新聞記事で、五百旗頭幸男さんという映画監督を知った。

石川県知事と、ムスリムのモスクを作った人、バンライフを送る人を通して、日本特有のムラ社会を描き出すドキュメンタリー映画を撮った監督。普段は、石川のテレビ局で働いている。この映画『裸のムラ』は10月8日公開。観たいが、近所の映画館ではやってなくてショックである。

この人が有名になったのは『はりぼて』というドキュメンタリー映画がきっかけ。この映画では、富山市市議の政務活動費の不正受給による大量辞職が描かれている。数年前に富山市議が大量辞職したことはニュースで知っていたが、こういう映画が公開されていたことは知らなかった。アマゾンでレンタルして観てみたが、めちゃくちゃ面白い。扱っている内容が多くの市議の犯罪だけに笑えないのだが、構成やBGMのせいで笑ってしまう。久しぶりに面白い邦画を観た。

作ったのは、富山のチューリップテレビという地方のテレビ局。地方のテレビ局ってここまでやれるんだなと驚いた。誰もが知っている俳優や監督で何億もかけて映画撮って、宣伝もバンバンされる邦画でさえ、「つまらんなぁ、このくだりいる?」みたいな内容のものが多いから、だんだん邦画を観なくなったのだけど、『はりぼて』を観ると「日本の映画、まだまだいけるやん!!!」と思わされた。というより、なまじ資金力やブランドがないほうが面白い映画が撮れるのかもしれないな。『裸のムラ』も、あらすじだけでめっちゃ観たい。『はりぼて』はゲオやツタヤでのレンタルはされてなくて、どうやらU-NEXTやアマゾンといった配信でしか観られない。でも、絶対に観ることをおススメする。とにかく面白いし、いろんな、複雑な感情が湧いてくる。

政治家ってのは、みんな同じだよな。

平気で悪いことして、ばれていないうちは偉そうにふんぞりかえってて、追求されているあいだも嘘をつき通してて、最後に動かぬ証拠が出てきたら土下座するんだよ。

でも富山市がヤバいのは、市議だけじゃない。市長もヤバいし、役所もヤバいし、もっといえば市民もヤバい。市長はべつに悪いことはやっていないのだが、市議の不正受給や給料の増額に関して、我関せずというスタンスを貫いている。いや、お前は市民の代表だろ、なんで市民の代表が、市民の感覚を無視しているんだ。

役所もヤバい。テレビ局がいろいろなところに情報開示の請求をしているとき、教育委員会や生涯課の人間が、テレビ局が嗅ぎまわっていることを市議に漏らしている。誰がどのような情報の開示を請求しているかは秘密にしておかないといけないというルールがあるのに、それを役場の人間は無視し、情報をきいた市議は業者に口止めを行っている。

途中、テレビ局は富山市民に不正受給についてインタビューしているが、なんか市民の反応を見ていると大丈夫かと思ってしまう。ずいぶん市議に甘いなぁと思ってしまう。富山市議は市民の税金を自分の私腹を肥やすために使っている。市議が大量辞職して、心機一転頑張りますといった矢先に、新たな不正受給疑惑が出てくる。選挙で4年間私を信じてくださいと言って当選した矢先に不正受給が明らかになる。それを追求する他の市議は、女性への性的被害と建造物侵入の罪を犯す。最終的に、初当選して間もない新人議員が議長になるという異例の事態に陥る。当然、議会の進行はちぐはぐになる。もうめちゃくちゃだよ!

本当、富山市民じゃなくて良かったと思うが、アマゾンのレビューにもあるとおり、全国の市議会がこんな感じだろうし、県議会も国会も同じだろう。ところで、オリンピック元理事の高橋治之が、安倍晋三に「逮捕されないようにするから理事になってくれ」と言われたと報じる文春の記事がなぜもっと大きく扱われないのだろう?国葬があるから、この記事が大きく扱われないよう誰かが圧力をかけたのだろうけど。本当に不謹慎だが、山上は安倍晋三を一人殺すかわりに、統一教会の2世信者ほか多くの人を救ったと思うよ。山上が安倍を殺したことで、他の悪事を働く政治家とか経営者は震え上がっただろう。下手したら自分も殺されるってね。山上のやったことは悪だ、しかしこの悪はもっと巨大な悪を駆逐するきっかけをもたらした。悪貨は良貨を駆逐するが、悪貨は最悪貨も駆逐する。

映画を観てるとさぁ、政治家がここまでひどいともう議会自体なくしたほうがいいんじゃねぇかすら思ってしまう。それは暴論極論だが、彼らは一体何のために存在しているのだろうと思ってしまう。映画は、市議が議会報酬を60万から70万にあげる案を提出するところから始まる。市民は反対しているが、市長は我関せずで、結局可決し70万に引き上げられる。そのなかで、市議のドンから始まる自民党会派の市議の不正受給疑惑が持ち上がり、チューリップテレビは徹底的に調査し報道する。市議はしらばっくれるが、次々に架空請求や水増しが明らかになり、市議は大量辞職し起訴される。そして、市議は報酬を60万に戻す案を提出し可決される。

いやはや、もうね呆れて笑ってしまうわ。お笑い芸人のコントより面白いよ。しらばっくれて、その次は謝罪会見開いてんの。そこに、ドリフで流すようなとぼけたBGMが流れてくるの。構成も完璧で、次から次にこういうくだりが流れる。それだけ多くの市議が不正受給し、しらばっくれ、謝罪会見を開き、辞職するのだ。最高の茶番である。