ネットフリックス『全裸監督』感想

いやー面白かったね。

日本のテレビドラマはもうずっと観ていないし、邦画もあまり観ない。ネットフリックスも、ジョジョの6部を観るために契約したんだが、ついでに観た『全裸監督』は素晴らしい出来だった。

作品がどれだけ実話に基づいているのかよく分からないが、物語として本当によくできているなぁと素人ながら感じた。できればシーズン3をやってほしいなと思うが、シーズン2のあの終わり方を観るとあれで良かったと思う。これ、どうやって収束させるのかなと思いながら最終回を観ていたが、ああやるのか。川田と村西の浜辺でのやり取りがすごく良かった。村西ってやっぱりすごいなと。優秀なビジネスマンってああやって物を売りつけるのかとどうでいいところで関心したし、ひたすら暗い終わりしか見えていなかったのに、あのシーンでトシの魂も浄化された。

以前ゲオで村西監督のドキュメンタリーを借りて観たのだが、あれはつまらなくて全部観ることができなかった。たくさんの全裸の女優か草原かどこかで歌を歌っていて、つまらんなーと思ってすぐに返却した。それでもあの独特の喋りが脳裏にインプットされていたようだ。『全裸監督』の山田孝之の演技でよみがえった。うわー村西監督だーって思ったもんな。山田孝之、すごいわ。すごい。山田孝之に限らず、あの作品に出ていた役者はみんな良かった、本当にナイスだった。俳優ってすごいなと思わされたもんなー。

結局日本のテレビドラマを観る気が全く起きないのは、役者の問題じゃなくて、製作側の問題だと思った。たぶん、いろんな規制やしがらみがあるんだろうな。もちろん、テレビでおっぱいは出せないし絡みも映せない。でも、それ以上に業界特有の変なしがらみだのなんだのがテレビドラマをつまらなくさせているのだろう。あるいは、テレビの前の視聴者が本当の原因かもしれない。ネットフリックスはそこらへんを忖度しなくていい、少なくとも日本の企業よりかはましだろうからあれだけ面白いものがとれたのだろう。

昭和の終盤から平成の始まりにかけての、あの時代のぎとぎとさは、平成に生まれた者からすると野蛮で汚く見える。けれども、人間としてのエネルギーは今の時代よりももっともっと強かったように見える。その象徴が村西監督で、今の若い人間にはない目のぎらつき、欲望から生まれる力はすさまじいものがある。そこらへんが人間としての魅力であり、だからこそ、結局誰も幸せにはならなかったけど、多くの人間が村西のもとへ集まったのだ。銀行に行って、元本の返済ではなく、衛生のほうに金をぶち込める、負けるとわかっていても、ヤクザから借りたお金をぶち込めるからこそ魅力的なのだ。元本の返済に充てるようなやつがドラマになるわけがない。そういう破天荒なバカは今の時代にどれほどいるのだろうか。ちいさくまとまっていないやつが今の時代にどれくらいいるのだろうか。まぁいようがいまいがどっちでもいいのだが。

にしても、妻子のいるビジネスマンが、会社の倒産を期にビニ本やってアダルトビデオの監督になって、というのはぶっ飛んだ人生だよな。なにが起こったんだろう。普通だったらまあ、別の会社にまた就職して終わりのはずなのにね。しかも、会社が倒産して家に早く戻ったら妻に不倫されてて、あんたでは一度も感じたことがないなんて言われて、それなのに自らがビデオに出演する監督になるというのはなかなか胆力があるよな。人間としての強さを本当に感じる。自分なんてしょうもないことで何日も悩むから、ああいう強さを見ると羨ましく感じるし、人生も面白く生きられそうだ。

たくさん書いてしまった。次は自伝を読んでみようと思う。