出口調査してきた

仕事で出口調査してきた。

けっこうきつい仕事だった。投票所の出口に立って投票し終わった人にアンケートを取る仕事。アンケートをとると言っても、今はタブレットに質問が表示されてそれにタッチしてもらうだけなので簡単である。ただ、早朝から晩まで8時間くらい立っていたので足が棒になった。曇っていたのが幸いだった。一番楽な天候で助かった。

出口調査か、あるいは選管でもなけりゃ一日中投票所にいることはないので新鮮な体験ではあった。一日中投票所に立っていて実感したが、やっぱり若者は投票に来ない。CMやらなんやらで芸能人や有名人が「若者よ、投票に行こう!」と呼びかけても若者には響かない。正直もっと多くの人が投票に来るものだと思っていた。人が来ないとただつったっているだけになるので時間が進まず苦しかった。自分が担当したところは都市ではないがわりと街に近いところで有権者もそれなりにいるところだがひっきりなしに投票に来るという状態ではなかった。とはいえ、政治に興味なさそうな若い夫婦やカップル(見た目で判断するな!)が子どもを連れてきていたり、高校生が一人で選挙に来ていたのは興味深かった。子どもを連れて選挙に行くっていいことだよな。その子は選挙に行くことが特別なことではなく当たり前のことだと思うだろうし。出口から投票所を見ていると、ある子は親が投票が終わったあとも興味深そうに政党と候補者の書かれた一覧表を眺めていた。

お国柄もあるのだろうが欧米は政治が身近で選挙はなんだかお祭りみたいに見える。日本の選挙はまぁお通夜だな。静かに静かに進行される。投票率が高いならいいけど、有権者の半分が放棄しているんだから本当にひどい。国民の多くが将来が不安だというが投票はしない、それはつまり政治がちゃんと機能していないことの証左でもあるのだけど。

 

安倍さん銃撃事件、いろいろと明らかになってきたな。何かが起こるときって偶然に偶然が重なっていくのだろうか。もし安倍さんの演説が急遽奈良に変更されていなかったらこんなことは起こらなかったのだろうか。岡山の警備は厳しくて銃殺できなかったらしい。奈良の警備もいろいろ批判されているが、責任者が警備計画に目を通したのは当日の午前中だったようだし、そこから完璧な警備をとるというのはなかなか難しかっただろう。まぁそれでも、背後にまったく注意を払わない警備なんて素人ですらおかしいと思うが。銃殺しようと企んでいる人間のホームグラウンドで急遽警備の手薄な演説が行われるというのは、なんだか偶然にしては出来過ぎている話だよな。

にしても、自分の家庭をめちゃくちゃにした統一教会の幹部を殺せないから、かわりに関わりのある安倍さんを殺すというのはよく分からない。安部さんが悪いわけではないのに。昼にポケ―っと見ていたワイドショーの出演者も一様に「飛躍しすぎじゃないか」とコメントしていた。しかしそもそも、論理的、常識的にものを考える人間は人を殺すことはないわけで。

とはいえ、容疑者はもともと常識人だったわけで、母親が統一教会献金したせいで破産し、兄は自殺し家庭崩壊した。でもそこでもまだ容疑者は殺人を犯すほど愚かではなかったはずなのだ。破産は20年前のことだったのだから。彼は自衛隊に入り、その後努力していろいろな資格をとった。この人はむしろ逆境に負けないすごい人だったのだ。でも職を転々としていたということは、憶測にはなるが資格を生かした仕事に就けなかったのかもしれない。そこらへんは分からない。なんにせよ、努力もむなしく人生が少しずつ少しずつ蝕まれていったのだ。そして、人生が暗転した根本の原因である統一教会と関係のある安倍さんを銃殺した。

どんなに苦しい立場に置かれても犯罪を犯さず懸命に生きている人が大半なわけで、容疑者の擁護はできないが、それでも彼の境遇を思うとため息しか出ない。彼に一体何ができただろう、彼にはどうしようもないことばかりが彼の人生を蝕んでいったのだ。日本のこれからを考えてみるに、明らかにこのような境遇にならざるをえない土壌は拡がっていくだろう。個人ではどうしようもないさまざまな要素が少しずつ人生を蝕んでいく。「人生どうにでもなれ」という投げやりな人間はますます増えていく。その人間の憎しみの矛が宗教団体や政治家や、あるいは何の関係もない人たちに向かうことは今後ますます増えていくだろうな。国民にとって選挙はこういう事態を変えるためのもっとも有効な手段だが、有権者の半分がその手段を放棄していることがまた状況をさらに悪化させている。