ヤフーニュースとマンガに嘆息した一日

今日は仕事で人の家の片づけをし、休憩中に家主とコーヒーを一緒に飲んでいると、家の前を散歩でおばあちゃんが通りかかった。そのおばあちゃんを見て、家主が「あの人は介護でとても苦労した」と聞いてもいないのに教えてくれた。

仕事を片づけ、帰りしに快活CLUBに行ってマンガを読む。かたわら、スマホでヤフーニュースを見ていると、広島の転出超過問題で、特に若い女性の転出が際立っているというニュースがあった。

https://news.yahoo.co.jp/articles/76e3ce4553282543753c71a29386b65fe2f65ba2

記事では、都会のほうが選択肢が多くてキラキラしているからとか、やりたい仕事が広島にはないとかといった理由をあげていたが、ヤフコメでは、秋田の横手市出身だというコメ主の、田舎では噂話がすぐに拡がり精神的に病むし、悪口が多く人のレベルが低いのが原因だというコメントが共感を多く集めていた。都会が田舎から人をすいあげるというよりも、田舎が人を追い出しているというコメ主の指摘は、よく分かる。

これと同じようなことを豊岡で劇団を主宰する平田オリザも本で言っているし、田舎に住む自分としても噂話が本当に多くて辟易するからコメ主には共感しかない。

しかもなぜか、こちらが聞いてもいないことを教えてくるんだよな。「あの人は介護でとても苦労した」とか。でも、これって年寄りだけではなく若者もそうで、自分が高校生のとき、こちらがきいてもいないのに、「○○はどこの大学志望」とか「○○は○○と付き合っている」とかわざわざ教えてくる同級生が何人もいた。本当に不思議である。なぜわざわざそういう噂話を話すのだろう。

たちが悪いのは、その噂話はたいてい尾ひれがついて事実ではなくなっていることだ。自分の母親が「同級生の○○君、鬱で仕事を休んでいるらしいよ、電話してあげない」というから、久しぶりに電話したら「おれ、鬱じゃないけど」と返ってきた。事実を捻じ曲げたのが母親なのか、母親に話した人間なのか知らないが、本当にうんざりした。こういうホラ話を普通にするので、ヤフコメでいうように精神が病むというのはあながち嘘ではない。

おそらく自分に関する噂話も尾ひれがついた状態で拡散されているだろうし、本当に面倒くさい。自分は同級生との人間関係をすべてリセットしているから、自分には誰の噂話も入ってこないが、自分の噂話はみんなに拡がっているのだろうな。自分の情報を誰に話していなくても、目撃情報だとか、家族が誰かに喋ることで、そこから勝手に推測され歪曲された事実となり伝染していくのだ。結局何したって噂されているのだ、うんざりする。

こういうのが嫌な人は都会に行くし、もう帰ってこなくなるのだろう。自分は自然が豊かなところでないと無理な人間なので田舎に戻ってきたが、田舎特有の粘っこい人間関係には、田舎の人間であるのに慣れない。田舎の隣の家との物理的距離は、学生時代の、アパートの部屋の壁一枚隔てた距離よりもはるかに遠いのに、精神的には壁一枚で息苦しい。人間関係だけは、都会にいた学生時代のほうがずっといい。

噂話と悪口を言うのはもう田舎にとっては文化みたいなものだから、人が転出し衰退していくのはどうしょうもないだろう。都会に比べて仕事や選択肢が少ないというのは、もっとどうしょうもない。仕事や選択肢で東京に勝てるわけがないのだから。

快活CLUBでは『カモのネギには毒がある』を読んだ。

本当に素晴らしいマンガだ。6巻では、アルゼンチンで教えていた加茂教授の後輩が帰国し、岡山で地方活性化に取り組むという内容。

まず、衝撃だったのが、アルゼンチンはかつて日本よりもはるかに経済大国で、しかし政府の度重なる失政によって貧困国に成り下がった唯一の国であるという事実。そして今、日本はアルゼンチンと同じ道を歩みつつあるという事実。実際、今の日本では、海外からの観光客が何十万も旅行で金を使うのに、日本人はマックの数百円の値上がりに文句を言っている。確実に日本人は貧乏になってきているのだ。

で、後輩は、岡山の地方活性化に取り組もうとするのだが、そのライバルには悪徳コンサルタントがいて…という内容。

悪徳コンサルタントは、地方活性化の案として、使われていない建物を温泉などの複合施設としてオープンさせ、県外や県内の人の癒やしの場として機能させようとプレゼンする。しかし加茂教授は、これは最悪の案だと一蹴する。こういう箱物は、最初は人が集まるが、次第に人が来なくなり、それでも建物維持のために税金が投入され続けることになるらしい。まぁバブルのころのいろんな箱物を見ればそれは明らかだ。

これを読んでて、悲しいことに、うちの県は新しく県立美術館という箱物を作り、しかも自動車専用道路も作っている。この時代に、こういうことをしているのだ。しかも、アメリカなら普通に流通している箱を、アンディウォーホルが作ったというだけで何億も出して購入している。アホの極みである。これも、悪徳コンサルタントに提案されたのかなぁ。

このマンガを読んでいると本当に勉強になる。夏原武は今ドラマでもやっている『正直不動産』の原案を書いている人。この人は見た目はヤクザみたいだが、すごくタメになるマンガをたくさん出してくれる。『正直不動産』や『カモのネギには毒がある』を読んだおかげで悪徳業者に騙されなくなった人はけっこういると思う。

6巻の巻末では、日本の現状について書かれていて、アルゼンチンがかつてやっていたバラまき政策を今の日本もやっていて、結局日本全体が貧乏になってきている。その結果として、若者は特殊詐欺や全国各地の強盗に手を染めている。まぁ政治家が率先して悪事に手を染め犯罪まがいのことをしているわけだから、若者がやるのも仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。しかも、政治家はトカゲのしっぽ以外逮捕されないわけで、こういうのがずっと続くと、政治家の命が狙われるのは仕方ないという風潮が出てくるだろう。彼らには法律が機能しないわけで、それなら私刑をしようと画策する人間が出てきてもおかしくはない。

なんにせよ、日本は確実に没落してきている。でも、これは結局経済だけを見た話で、お金とはべつの価値観を、国民全体で探すチャンスでもある。資本主義のこの、あらゆるものを搾取し激烈な競争を強いるシステムから外れた生き方を見出だせるなら、貧しくても困りはしないかもしれない。そうした希望の萌芽はむしろ田舎にこそあると思う。