映画『正欲』感想

小説が素晴らしかったので映画を観に行った。

正欲

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感想としては小説のほうが良かったかな。全体的に、小説を抑制的にしたのが映画だった感じ。あの小説の、言葉の強さがとても心に刺さったので、映画ではだいぶその角が取れてしまっていて少し残念だった。とはいえ、小説はえぐみがきつかったから、抑制的な映画のほうが良かったという人もいたので、人それぞれだと思う。
新垣結衣磯村勇斗の演技は良かった。新垣結衣を久しぶりに見たんだが、あんな顔だったかなぁ。素がああなのか、役のせいか知らないが、夏月演じる新垣結衣も、佳道演じる磯村勇斗も、人生に徒労感を感じる顔や雰囲気がとても良かった。役者ってやっぱりすごいなと思ったが、役に入り込む人間ほど早死するんじゃないかと心配になった。
原作と映画はまぁまぁ話が違っていて、映画だと少し恋愛的な感じがあって、いや違うだろと思ってしまった。夏月が店で寿司食ってたら、そこに佳道と同級生がいっしょに入ってきて、夏月はすぐに店を出る。そして、佳道と同級生が店をでた後、車で尾行して佳道の家まで行く。これは夏月が嫉妬したのか、それとも自分と同じ、水に性的興奮を抱く同士が離れていってしまうんじゃないかと不安になったのか。そしてなぜか夏月は家の前にあった鉢を投げつけて佳道の家のガラスを割る。原作にはないこの件はいまいち意味が分からなかった。
映画の冒頭で、夏月は水に関する動画を観て自慰のような行為をするのだが、原作を読んでなかったら何をしているのかよくわからなかったかもしれないな。この物語は、水に性的興奮を抱くというのが最大の肝なので、観ている人間にこの登場人物は水に性的に興奮し自慰をしているとはっきり示さないといけなかったと思うのだが。そこら辺はガッキーだから厳しかったのかな。
あと、佳道と夏月が結婚しいっしょに暮らし始めてから、佳道が台所でビールとおつまみをたしなみがら水の動画を観るのはいまいち解せなかった。だって、水の動画というのは彼らにとってはアダルトビデオなわけで、普通ビールやおつまみといっしょにアダルトビデオを観るかなぁ。佳道は自慰行為してなかったし、興奮しているようにも見えなかった。
佳道と夏月が公園で水を噴射させるのも、二人で水遊びしているようにしか見えなかった。彼らにとってはあれは本来セックスみたいなもののはずで、楽しんではいるが、興奮しているようには見えなかった。
こういうのが、映画の全体を曖昧なものにさせていて、残念だった。まぁ役者も、素では水に性的興奮を抱く人間ではないから大変なんだろうけど。
にしても、やっぱり人と違うと、本当に生きづらくなるよなぁ。同僚とか同級生、悪気なく人を傷つけていく。観ていてしんどかった。自分もおそらく多くの人を傷つけているだろうから。
2時間20分が短く感じるほど、まとまった映画だった。だれることなく観ることができた。