トイレが壊れて介護が地獄

トイレが壊れた。電気系統がおかしくなったようで水が流れなくなった。修理に1週間くらいかかるらしい。トイレが使えなくなって仕方がないから100mくらい離れた公民館のトイレを使わせてもらっている。

うちには介護が必要な認知症の祖母がいて、足腰がよぼよぼだから100m離れた公民館に行くのも大変である。しかも過活動膀胱というやっかいな症状を抱えていて、尿が出ないにも関わらず尿意があるし、便が出ないにも関わらず便意がある。ひどいときには2,3分に一回トイレに行く。祖母は転倒したらおそらく施設暮らしになるので、母親が車にのせて公民館まで一日に何度も連れていっている。

いろいろと思うことがある。トイレの修理に一週間もかかるのは電気関係の部品の供給が遅れているかららしい。これもグローバル化の影響なのだろう、半導体やらなんやらの供給が遅れているのは米中摩擦やらコロナやらウクライナとロシアの戦争やらのせいである。まぁでもトイレと電気部品が関係し始めたのってここ十年くらいの話か?うちは水洗トイレになる前はぼっとん便所だったんだがぼっとん便所は壊れることなんてないわけで、ぼっとんなら今回みたいなめんどくさい事態にはならないのである。トイレの1週間前は風呂の給湯器が壊れた。これも五右衛門風呂だったら故障なんてないわけで、なんかもう暮らしのさまざまな箇所が、便利と引き換えに自分らの手の及ばないところへ遠のいていってしまったのを感じる。

風呂もトイレも8年使って壊れた。普通は10数年持つらしいから8年で壊れるのは早い。10年のうち1週間ほど壊れて困る程度だったらまぁいいか的な考えもあるかもしれんが、それは今の社会システムだから言えることのように思う。日本は今ギリギリで持ちこたえていて、でもいろいろなところで亀裂が入り始めている。今日なんか自動車整備士のブラックな環境がヤフーニュースになっていたが、物流業界や教育業界、医療現場、公官庁などあらゆるところがブラックで決壊寸前の状況になっている。末端の人たちがあらゆるものを犠牲にして崩壊を食い止めている状況だが、おそらくもう数年もたないだろう。そうなるとトイレの修理も1週間どころか1か月たってもダメかもしれない。だからといって消費者は前の不便な環境に戻ることができるか、それは無理だ。

認知症の祖母は、認知症になる前から一日中ベッドの上でお菓子をボリボリ食べながらテレビを観る生活をしていた。今振り返ればそんなことしてたらそりゃ認知症になるわなという生活で、祖母に対して時々無性にイライラする。認知症に加え、過活動膀胱、糖尿病などのオンパレードで、もう少し運動とかちゃんとしとけばあんなに足がよぼよぼになることもなければボケることもなかったのにと思う。でも未来のことなんて誰にも分からない。自分は今働きたいときにしか働かない自営業で、ストレスのほとんどない生活を送っているが、これが将来どうなるのかは分からない。だから祖母のことをいろいろ責める立場にはない。

自分は今システムになるべく依存しなくてもいいようなスキルを身につけようと奮闘している。それはもう7,8年くらい前から考えていたことで、そのときから遅々とした歩みではあるが、自分なりに考えて少しずつスキルを身に着けてきた。だけど、こんなにも早く世界が、社会が脆弱になるとは思ってもいなかった。もっと早くいろいろなことをできるようにならないといけないと感じる。

生き方に正解はないと思う。だけど、みんな投資とかでお金をもっと貯めようとしているのには違和感を覚える。お金は必要だが、そういう方向性でいいのか?今回、トイレも風呂も壊れたわけだが、お金を出したところで直るのが早まるわけではない。お金があるかないかの問題ではないからだ。今後、お金ではどうしようもできない世界が訪れると思う。そういうときに必要なのは、人間関係だったり、お金がなくてもどうにか困難な状況を乗り切る力だと思う。しかし現代は、家族や地域をはじめとするさまざまな人間関係を断ち切り、人ではなくシステムに頼らせお金を使わせる社会になっている。だから本当に困った時、頼るのが人間関係や自分に備わる能力ではなく、システムになってしまっている。だからお金がかかる、余計に一生懸命働かないといけない、けど全然金が貯まらない、どうしようという構造。孤独死や拡大自殺、死刑になるためにわざと犯罪を犯すみたいな事件が日本中で起こっている。

しかし昔のボケ老人はどうやって生きていたんだろうか?もちろん看てくれる家族がいたわけだが、ぼっとん便所みたいなところでちゃんと用を足せたのだろうか?うちの祖母みたいな足腰がガクガクになるほど弱った老人はいなかったのかもしれんな。みんな畑で働いて歩き回っていただろうから、腰は曲がるが歩けたのかもしれない。それとも垂れ流していたのを、嫁に来た娘にやらせていたのだろうか?それはそれで地獄である。