生活について

 生きていこうと思ったら生活について考える必要がある。生活について考えるとは、収入と支出について考えるということになる。生活を維持するためには、支出よりも収入が多ければいい。単純な話だ。

 

収入→  生  活  →支出

 

 収入が支出よりも多ければ貯金できるし、支出が収入よりも多ければ赤字になる。

 生活の維持に関していえば、収入の多い少ないはそれほど問題にはならない。あくまで収入と支出の関係にのみ注目すればいい。

 もちろん、収入が多いほど生活は維持される。でも、いくら収入が多くても、ギャンブルなどで収入より支出が大きくなれば生活は維持できない。逆に、いくら収入が少なくても、支出がそれ以上に少なければ生活は維持できる。

  年功序列や終身雇用はすでに崩れているし、若者の多くは一つの企業に何十年も勤め続けるということは現実的ではないと思っている。それに、人工知能が近い将来多くの仕事を人間から奪うという予測もある。

 こうした状況のなかで、例えば落合陽一さんは、多くの仕事を掛け持ちする=百の生業を持つ百姓になることを提案している。政府や企業も、副業を認め始めている。

 以前よりも将来がよりいっそう見通せなくなっているなかで、仕事を掛け持ちして収入源を多く確保しておこうという戦略は正しい。一つの仕事をして20万の収入があるよりも、一つ10万の仕事を二つ掛け持ちしているほうが、同じ月収でもリスクの大きさが違うからだ。前者は解雇されれば収入がなくなるが、後者は一方で解雇されてももう一方の10万の収入がある。

  今のような先行きが見えない社会のなかで生活を維持する一つの方法が、上に書いたように仕事を掛け持ちする百姓になるというもの。

 でももう一つある。もう一つも、百姓になるという戦略だ。ただし、いくつもの収入源を持っているという意味での百姓ではなく、いくつもの支出を抑える方法を持っているという意味での百姓だ。

  僕たちは、教師とか医師とか農家のように何か特定の仕事を持っていて、そこで得たお金でいろいろなものを買ったりサービスを受けたりしている。このことについて見直してみようというのが、僕の提案だ。

 ものをあまり持たないミニマリストやシンプルな生活を送ろうとしている人たちはすでに実践しているのだろうけど、生活を自分の状態や欲求に合わせて少し不合理化してみるのだ。不合理化という言葉が難しいのなら、不便にしてみるといったっていい。

「何を言っている。便利であればあるほどいいじゃないか」という人もいるんだろうけど、社会はあまりにも便利になりすぎて実は僕たちは結構不利益を被っている。

 その一つが生活習慣病だ。僕たちは小学生や中学生のころは歩いて学校に通っていたのに、働き始めると電車や車を使いほとんど自分の足を使わなくなる。で、運動がおっくうになって生活習慣病へと歩みをすすめるのだ。

 生活を不合理化するとは、たとえば電車や車を使わないようにするということ。といっても、べつにまったく使わないということではなくて、電車なら一つ前の駅で降りて歩くとかエスカレーターやエレベーターを使わないとかそんな感じだ。

 不便であることから得られる利益のことを「不便益」というらしいが、一つ前の駅から降りて歩けば健康になるという不便益が得られる。職場が近所なら一週間のうち一日だけ歩いていったっていい。健康になるだけでなく、支出が抑えられる。これも不便益で一つの支出の抑え方だ。

  僕たちは知らず知らずのうちに、社会のさまざまなシステムにお金を使わされるように仕組まれている。よくよく考えていないと、僕たちの家計簿には次から次へと支出項目が追加されていってしまう。本当に自分にとって必要なものならいいんだけど、そうではないものまで購入するからお金がいくらあっても足りない。こうした状況に嫌気がさす人が多いから、ミニマリストシンプルライフといった言葉が登場するのだ。

  世の中には収入を増やすことを考えている人が多いけど、生活の維持という観点から考えるなら、収入を増やすよりも支出を抑えることのほうが楽だ。収入を増やそうとするなら、消費者の求める高い質を実現しなければならない。多くの人がわかっているように収入を増やすってとても大変なことだ。一方で、支出を抑えるなら、自分が満足しさえすればいい。手を抜こうと思えばいくらでも手を抜ける。べつにノルマはないし、自分の好きなようにできる。

  僕はこのような考えをもっていて、ほかの人よりもけっこう生活が不合理されている。不便なことも多いけど、それ以上に自分の生活をしていると思えている。こうした実感がもてるのも不便益の一つかもしれない。

 

世の中に出回っている本で参考になるのは、高村友也さんの『自作の小屋で暮らそう』という本。Bライフという生活を提唱された方で、本書では土地の取得から小屋を建てて実際に暮らしている様子までが描かれている。BライフのBはBasic(基本的な)のBで、いろいろな支出のおさえかたが書かれていて面白い。僕はここまでできないけれど、いろいろと参考になった。

自作の小屋で暮らそう: Bライフの愉しみ (ちくま文庫)

 

以上が生活に対する僕の基本的な考え方。次から具体的な実践について書いていきたいと思う。