日本人の静かなるデモ

日本人はデモをしないと言われるが、それは違うと思う。たしかに今フランスでやっている年金関係のデモのような、みんなで練り歩いて主張をするみたいなやつはあまりやっていないかもしれない。ストライキも日本ではほとんどみかけない。

でも日本人はちゃんとデモをやっていると思うんだよな、ある意味無意識レベルで。

 

このまえクローズアップ現代という番組で、若者が海外に出稼ぎに行っているというニュースをやっていた。日本は重労働低賃金だから、海外に働きに出る。日本より労働時間が短いのに、稼ぎは何倍にもなるということだった。だから海外出稼ぎの説明会にはたくさんの若者が参加しているという。自分も行こうかなと思って調べたらちょびっと年齢がオーバーしていてだめだった。

番組で、コメンテーターとして参加していたどっかの専門家は好意的に評価していた。留学に行かない学生が増えるなかで、海外に出向くことはいいことだと。そして、これは若者たちの日本企業への無言のストライキだというようなことも言っていた。自分もそう思う。自分のすべてを会社ごときのために犠牲にする必要はないのだ。企業も大変な状況にあって、若者が集まらないと人事担当者が嘆いていたが、だからといって若い社員を低賃金でこきつかっていいわけがない。今の社会は、若者に限らず多くの人が自分の大部分を犠牲にすることで成り立っている。そういう社会は一度完全に壊したほうがいいと思う。

 

今日統一地方選挙があったけど、おそらく今回も投票率はかなり低いと思う。自分もめんどくさいから行かなかった。こういうのも一つのデモだと思うのだがどうだろう?

これだけ選挙に行きましょうと言われても行かない人が多いということは、おそらくこれは選挙制度そのものに対するデモではないだろうか。

投票にちゃんと行く人でも、積極的に投票したいという候補がいるという人はどれくらいいるのだろうか。自分は前回の参院選挙は投票に行ったが、投票したいと思える人や政党はなかった。世論調査でも、首相の支持理由も毎回一番は「他よりましだから」というもので積極的に支持されているわけではない。

投票したい候補がいなくても選挙には行くというのは、とりあえず選挙制度そのものは支持しますよという意志にはなっている。一方で選挙そのものすら支持しない場合の意志は、やっぱり行かないということになるのだろう。とはいえ、選挙に代わる良いシステムがあるのかと聞かれれば、自分には分からない。

 

少子化も、日本人の静かなデモに思う。べつにデモをやっているという意識はないだろうけど、政治家に対する無言の圧力だなぁと出生に関する記事を見るたび思う。政治家も、心の底では諦めているだろうな、もう何をしても無駄だろうし。とはいえ、何かしらの政策はうちださないといけないわけで。そして効果がないから政治家に対する信頼はさらに失われていくという負のスパイラル。

なんにせよ、世の中に渦巻いている閉塞感の大部分は政治家に原因がある。日本人は節度があるから、この時代に、労働をとめてストライキをしたり、デモで警察と武力衝突をしたりはしない。だけど、そういった他国の表立ったデモよりも、日本人のやる静かなデモのほうが得体のしれなさが際立って不気味である。