フリーターが起業してみた雑感

仲間が、会社つくろうと言ってきて、「いいですよ~」と答えてから2年がたった。屋号を決めこういうことをやろうと話し合ったまま何もせず2年。2年たち、ふと「そろそろ物事を動かしたいな」と思ったが、仲間はすでに県外に出てあくせく働いていた。言い出しっぺなんだから会社作れよと思ったが、なんやかんやで自分が動くことになり一人でいろいろ手続きして起業した。

 

結論としては、一人でいろいろ動いて起業してよかったなと感じる。何がよかったかというと、世の中の仕組みが多少なりとも分かったことだ。起業のしかたも分かった。仲間にまかせていたら自分は何も知ることがなかったと思う。

自分はこれまで人から頼まれた仕事をやったり、面白そうな仕事があれば応募してやったりするといった個人事業主というかフリーターみたいな働き方をしてきて、確定申告する必要もないくらいの微々たる収入でやってきた。つまり社会の仕組みが全然分からない。今、確定申告と書いたが、確定申告が何なのかもよく分からん、税金のこともよく分からん。そして、親の扶養にいまだに入っている。控除のことも親が勝手にやっているからよく分からん。そういう状態である。

 

そういう状態から起業してみたのだが、起業すること自体は難しくなかった。面倒くさいが今はfreeとか弥生の会計を使えば簡単にできる。フォーマットが用意されているのでそれにうちこんでいくだけでよい。今回、合同会社を作った。申請するのに6万円かかる。定款は弥生に電子定款用のPDFを作ってもらいCDにやいて出したので、紙で提出するのにかかる4万円は浮いた。その他、申請するのに必要な会社実印と合わせて銀行用の印鑑と角印、個人実印を作るのに合計1万弱かかった。結局7万かかった。フリーターには大きな金額だが、勉強代だと思うことにする。

 

起業に関する本を読んでいると、起業後にいろいろなところに書類を提出しにいかないといけないことが分かった。ということで、今日法務局に行って登記事項証明の紙を4枚2400円で手に入れ、まず年金事務所に行った。健康保険と厚生年金の加入をするためである。しかし、会社はつくったばかりでべつに会社を通して仕事はやっていないので、会社関係で発生するお金はないし、したがって役員報酬もない。会社設立して5日以内に行かないといけないと本やネットにあったから、急いで書類に記入して行ったが、この用紙は給料を支払いはじめてから提出してくださいと言われた。そこでやっと自分は理解した。会社から給料をもらうことで、その会社の社会保険に加入できるのだ。恥ずかしい思いをしたが、こういう経験をしないと物事は学べないようだ。

 

続いて税務署に行って、設立届を出そうと思ったが、自分の住んでいるところにある税務署に行ってしまい出せなかった。会社の所在地と管轄が違っていたので提出できなかった。家に帰ってから青色申告の申請書は出せたのにと思ったが、まぁ今年は確定申告しないといけないほど稼いでないからいいかと思った。まぁでも出しといたほうがよかったのか。こういうことも自分にはよく分からない。

 

会社は自分含めて2人の従業員がいるが、仲間は県外であくせく働いて特に何もしないから実質一人でやることになるだろう。とはいえ、会社でやる仕事なんて特にない。だからこれまでどおり個人事業主でいいということになる。そうすると、会社の存在は意味がなく、たしか法人住民税の7万くらいを払うことになる。あほらしいといえばあほらしいが、会社をつくったことで「よぉし金稼ぐかぁ!」という気分になった。何もしなくても税金を払うことになるので、なんか尻をたたかれた感じになって働く気分になった。

 

あれをして金稼ぎたいな、これをして金稼ごうと意気込んでいる。起業する前は、金を稼ぐ気力があまりなかったし、そういうことはばかばかしいとすら思っていた。が、起業するとなんだか自己啓発されたような感じになっている。自己啓発は嫌いだ。自己啓発とは結局のところ、金を稼ぐために自己の意識や生活を資本主義システムにより迎合させることだ。自己啓発は自分をシステムの奴隷へと自ら駆り立てることだ。自分は自由でいたい。自由を目指すことと、自己啓発することはベクトルが正反対なのだ。起業する前は、そういうことを考えていた。

 

しかしそういう自分が今は自身を自己啓発している。で、自己嫌悪しているかというと決してそうではない。自分はなんでもできる百の生業をもつジェネラリストを目指している。あれもできるようになりたい、これもできるようになりたいと思っている。そうすることでシステムによりかかることなく、自分の足でたつことができるようになり、自由でいられる。自己啓発は、そうした思いをさらに加速させた。で、今はロープワークを学んでアーボリストになろうとか、タケノコ掘りの講習に参加しようと具体的にイメージして行動に移そうと思えるようになった。今まで出会った人たちは自己啓発を否定する人が多く、自分も否定する側にいたが、自己啓発は決して否定されるものではないと思った。もちろん怪しげなセミナーとかは別だが、自己啓発そのものは否定されるべきものではないようだ。そういうことも起業して学ぶことができた。自分の考え、行動は最終的には金を稼ぐこととつながっていて、それは結果的には資本主義システムに飼いならされた豚へと自らなろうとすることである。とはいえ、そのプロセスのなかで自分はよりいろいろできるようになるのであれば悪いことではない。うまく説明できないな。むずかしい。自分は、結果的にシステムの犬になろうと自己啓発されているが、それは同時に自分が自由になるためのプロセスでもある。矛盾が一体になっている感じ。起業する前は、自由になることと、自己啓発することが正反対の道だと思っていたのに、実はそれが一体のものでもあると理解した。実に面白い。