『AV女優の社会学』から見たポルノハバー

この前ネットサーフィンしてたら「ポルノハバー」なるものを知った。ポルノハバーというのは、pornohubというサイトに動画をアップしてお金を稼ぐ人のことだ。ユーチューバーのポルノハブ版である。男性諸君のほとんどがこのサイトを知っているはずだ。昨日初めてポルノハバーの動画を観た。衝撃だった。なんだろうな、この感覚は。ついにこういう時代になったんだなぁと思った。自分たちのセックス動画をアップしてお金を稼ぐ時代。いやはや。

 

ポルノハブを観てたらあるカップルの動画がアップされていた。そのカップルはおそらくポルノハブ界のヒカキンみたいな立ち位置で、かなり人気があるポルノハバーだった。美男美女のコンビ。文春にもインタビューされていたので、詳しくはこちらから。

 

母親には「彼氏とビジネスやってる」と説明 月収1000万超、20代のカップルが“アダルト動画配信”を始めたわけ | 文春オンライン (bunshun.jp)

 

ポルノハバー、これからどうなっていくのか、個人的にはかなり興味がある。エロという観点からではなく、文化的な観点から。youtubeに動画をアップするのが普通の時代になって、それが職業にもなっている。youtubeでなくても、tiktokとかインスタグラムに自分の画像や動画をアップすることに抵抗を感じない人が増えている。ポルノハブもこのなかに入ってくるのだろうか。

 

鈴木涼美「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのかを読んでいると、AV女優になる子は特別ではないのだということが分かる。AV女優は自分のセックスするところを見せてお金を稼いでいる。普通の感覚ではありえないから、われわれはAV女優を特殊な人だと思ってしまうが、著者はAV女優はあくまでわれわれと地続きなのだということをAV女優へのインタビューを通じて明らかにしていく。彼女たちはどこにでもいる普通の女の子で、AV業界に入ったのは何か明確な意思や目的があったわけではなく、誘われたからとかそんな理由でフラッと入っていく。われわれが何の気なしに適当に仕事を選ぶのと一緒である。とはいえそれは仕事に他ならないし、何より人々に自分のセックスを単に見せるのではなく魅せるわけで、それはエンターテイメントである。そうした要素が彼女達を文字通り「女優」にしていく。それでもやはりAV女優はわれわれからすればやっぱり特殊な人である。

 

芸能人はテレビの中の人で、遠くにいる人である。ユーチューバーは芸能人よりはるかに身近にいる。それは物理的な距離ではなく、心理的な距離である。自分たちはテレビに出ることはできなくても、YouTubeには簡単に動画をアップできる。これと同じで、AV女優は芸能人のように遠く感じるが、ポルノハバーは身近に感じるような気はする。AVはプロによってパッケージ化されているが、ポルノハブのほうは素人が頑張って作ってる感じはする。とはいえ文春にインタビューされているカップルの動画は編集もしっかりしていてちゃんとパッケージ化されている。個人的な解釈では、概念的な意味においてポルノハバーはわれわれとAV女優をつなぐバイパス的な存在で、その存在のおかげで鈴木涼美の主張をすんなり受け入れられるようになった。

 

自分のセックスの動画をアップできる人なんてほとんどいないだろうが、今後その感覚が変わっていく可能性はあるだろう。自分はyoutubeにときどき動画をアップしているが、誰もがyoutubeにアップするようになって自分もアップするようになった。以前は自分を映した動画を世界に向けてアップするなんて考えられなかったが、今では特に抵抗を感じない。もちろんモザイクをかけているが。普通の動画を撮ることとセックス動画を撮ることは、質的にまったく違うがそれでも今後ポルノハバーは増えていくと思う。youtubeはすでにレッドオーシャンなのに対して、pornohubはブルーオーシャンだから。

 

この前、The Girl Next Door (字幕版)という映画を観たのだが、AVを作ってるメーカーが単なるポルノビデオではなくて性教育のポルノビデオを作って大儲けしていた。個人的には今後、pornohubに性教育の動画をアップするポルノハバーが出てくると思う。というか、出てくるべきだと思う。映画では、それまでの性教育教材がクソだったので生徒が退屈してまったく教育になっていなかったが、AVメーカーが作った性教育ポルノビデオはエンターテイメント要素もあるので生徒にウケていた。だからビデオがバカ売れして大儲けしていた。まぁあれは映画の話だが、性教育という大義名分があれば、ポルノ動画はもっと幅広く受け入れられていくと思う。自分は小学生のころに性教育を受けた記憶があるが、内容が全く記憶に残っていない。退屈だったからだ。でもエンターテイメント要素のある性教育ポルノ動画ならちゃんと学習になるのではないか。べつにAVメーカーがつくったっていいと思うが、こういうのはポルノハバーのほうが向いているような気がする。そもそもAVメーカーはあやまった知識を刷り込む側のほうだし。

 

ユーチューバーはもう文化的にも職業的にも社会に定着しているから特に目新しいものはないが、ポルノハバーのほうは黎明期である。今後ポルノハバーが一般化していくのかそうでないのか、注目していきたいと思う。