「ここで、大きな立方体は裏返しになっていると考える」
「どういうこと?」
「君はこの図形の外側の全宇宙のことを、立方体の《外》だと思っている。しかし、立方体の《内》だと考えてみる。3次元サイコロ体の《中》に全宇宙が入っているんだよ」
「いや、意味がわからないんだけど」
「たとえば無限に広い宇宙を考える。その中に、ガラスでできたこの立体が浮かんでいるとしよう。そのとき、周りの宇宙全体を《中》に抱えている裏返しの立方体は正方形の面を6個持っていて、それがピラミッドの6個の底面に貼り付いているということ」
「うっ!」と僕はおかしなうなり声を出した。なんだその発想は!
「見えたかな」
「見えた。ぐるりと裏返した立方体ということだね!」
「そうだ。3次元サイコロ面を3次元にむりやり押し込めた様子は、そんなふうにも描ける。位相的には無限遠点を加える必要があるけれど」
「・・・・なかなかだなあ」
「次元を下げて、同じこともできる。つまり、2次元サイコロ面を2次元にむりやり押し込めてみよう」
「それはわかるよ。一つの正方形を大きくして潰すんだよね」
「それでは重なってしまうから、正方形の周り全体を《中》だと思うことにする。6個目の正方形の《中》は、⑥と番号を付けた領域すべてだ」P178-179
この件を読んだとき、衝撃を受けたよね。おおお!!!って。
いや、まだこの内容を完璧に、腑に落ちたかたちで理解しているわけではないけど、これは宇宙と心が一致していることを示唆している。
自分にはこう見えた。
この大きな立方体は人間である。
大きな立方体の内部にある小さな立方体、これが人間の心。
立方体は宇宙のなかにぽつねんと浮かんでいる。大きな立方体の外側が全宇宙なわけだが、上の文章にあるように、周りの宇宙全体を抱え込んでいる裏返しの立方体が6つのピラミッドの底面に貼り付いている。
何が言いたいがというと、宇宙=心なのだ。おおお!って思わないかい!?
数学的に、宇宙と心は同じものだという説明が上の文章ではなされているのである。
宇宙の中に人間がいて、それはつまり宇宙の中に心があって、そしてまた心の中には宇宙がある。このような、論理的には矛盾した状態が現実であるが、学問の世界ではむしろこの矛盾のほうが普通なのが面白い。
中沢新一や、ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版
の作者ホフスタッターも同じことを言っている(ポアンカレ予想には触れていないが)
エッシャーの絵を見てもらえれば分かるように、「不思議の環」というのは、ちょうどメビウスの帯のように、内側と外側が一体となっている環のことだろう。
ほんまに不思議な世界やね、この世は。