今年のブラック企業大賞はアミューズにしなければいけない

 三浦春馬くんが亡くなってもう1週間以上たつ。

 特別ファンでなかった自分でさえ、報道で死を知ったときはあまりの衝撃を受け呆然としてしまった。

 彼、30だったんだね。自分と一つしか違わなかった。彼が老けてるとかそういうことじゃなくて、もっと年上だと思っていた。それだけたくさんのドラマや映画に出て、芸能界にいることがあまりに当たり前で空気みたいな存在だった彼。

 

 彼の死の原因がいろいろと囁かれている。

 人間関係だったとか、過労だったとか、あるいは誹謗中傷だったとかいろいろ言われている。どれが原因だったか分からないし、もしかしたら本人も分からないかもしれない。

 

 たとえ彼の死の直接の原因が過労ではなかったにせよ、今年のブラック企業大賞は彼が所属していたアミューズにしないといけないと思う。

 どうしてかといえば、原因がどうであれ、結果的にアミューズは彼を守れなかったからだ。

 

 SNSというものが登場してから、有名人の立場ってものすごく弱くなったと思う。

 とくに人気商売である芸能人の立場はものすごく弱い。

 たとえば一般人どうしだったら、ツイッターとかインスタで悪口を送りつけられても、言い返したりブロックできる。

 でも芸能人だとそれがなかなかできない。イメージダウンする恐れがあるから。下手なことをすれば、炎上したり、週刊誌やワイドショーが騒ぎ立てる恐れがある。

 反撃ができないから、一般人がストレスのはけ口として、有名人を誹謗中傷している現実がある。

 

 それと、SNSが登場したことで、有名人のプライベートがなくなりつつある。

 今スマホに無音カメラのアプリとかあるから、盗撮されたりしている。

 この前、ネットで眞子さまと小室圭さんが電車内で仲睦まじくされている写真を見たけど、これ盗撮したやつじゃん。他にも、ゆきぽよがyoutuberに盗聴されたというニュースもあった。

 以前は週刊誌とかしか有名人を執拗に追いかけまわさなかったけど、今はもう誰もが有名人を追いかけまわしてネットにアップする。そういう意味で、有名人の気が休まる時間は以前に比べてほとんどなくなっている。

 いやこういうのも有名税のうちだからという批判もあるかもしれないけど、プライベートがほとんどないというのは地獄だと思うよ。

 

 三浦くんがイギリスへ語学留学していた際、自分を知っている人に会わないよう髪型を変えたり帽子をかぶっていたという記事を読んだ。もちろん彼は英語力アップなどのために留学したんだろうけど、自分を知っている人間がいない空間でゆっくりしたいというのもあったんじゃないかな。でもアミューズは早く帰ってこいと催促した。

 

 芸能人がSNSをやることはファンとしてはとても嬉しい。テレビでは見えない素の姿を見ることができるから。でも一方で、SNSはリアルの世界ではないから、匿名の人間の憎悪が向かってくる。事務所はこの現実をもっと重く受け止めるべきだと思う。

 

 同じアミューズに所属する佐藤健くんとか神木隆之介くんはyoutubeもやってるけど、これはたぶん彼らの意志でやってることではないだろう。

 ファンとしてはyoutubeでも観られるのは嬉しいが、彼らは精神的にしんどくないのかなと思ってしまう。あるいはこれも仕事だと割り切っているのだろうか。

 本田翼みたいに、自発的で趣味的な感じにyoutuberやってるのはいいと思うのだが、佐藤くんや神木くんはやらされているように見える。プライベートが削られているように感じる。

 

 芸能人は、サラリーマンとか公務員と違って、9時5時の世界ではないから、どうしても仕事とプライベートの境目が曖昧になってくる。忙しい人間はひたすら忙しくなってしまう。

 三浦くんみたいなストイックでまじめな人の、仕事とプライベートの境目は完全になくなっていたように感じる。彼が安息できる空間や時間はもはや日本にはなかったのだろう。自宅にいるときでさえ、インスタライブに引っ張りだされていた。いや、ライブの相手は悪意を持っていたわけではないよ。三浦くんだってそのときは楽しんでいたはず。でも、人は誰でも行方不明になれる時間と空間が必要なのだ。彼にはそれがなかった。

 

 

 コロナの影響もあって在宅勤務が増えているけど、これからは仕事とプライベートの境目ってもっと曖昧になっていくと思う。

 だから真面目でストイックな人ほど、プライベートをどんどん削っていくようになるし、企業も存続が大変な時期だからこそ仕事をどんどん増やしていくだろう。

 そういう意味でアミューズをはじめとする芸能事務所はいろんな企業の先駆けなのだ。

 三浦くんがたくさん働いていたのは事実だけど、じゃあ何時間働いていたかと問われると誰も分からないだろう。彼が演技のために語学留学したのは、仕事なのかプライベートなのか?答えはどちらでもあるのだ。だから労働時間なんて把握できないし、彼が労災認定されることはない。

 

 プライベートを削って仕事をしないといけない人は今後ますます増えていくだろう。

 仕事とプライベートが曖昧になると、過労死認定がしづらくなる。

 そういう意味でも、今年のブラック企業大賞アミューズに与えるべきなのだ。