弁当の廃棄問題

 

 この前、学会を運営する仕事を関わったのだが、弁当廃棄の問題を垣間見た。ずっともやもやしている。東京オリンピックで弁当の廃棄問題が話題になって運営が謝罪していたが、学会では弁当廃棄が当たり前になって運営側は慣れてしまっている。

 

 自分が仕事で関わった学会は、1200近くある学会の中でも中規模らしい。中規模の学会ですら、とんでもない量の弁当が廃棄されている。しかも学会には当然、大学教授など偉い人たちが来るので、出される弁当も高額なものである(一つ2500円と聞いた)。それが数百個(あるいは数千個?)廃棄されるのだ。

 

 どうしてそんなことが起こるのか。

 学会では、食事を摂りながら先生の話を聴くセミナーがある。

 さまざまなテーマのセミナーがあり、学会に参加する人たちは自分の聴きたいセミナーに参加し、そこで提供された弁当を食べながら話を聴く。

 で、それぞれのセミナーにどれぐらいの参加者が来るのか直前まで分からないので、あらかじめ決まった量の弁当をセミナー主催者が仕出し屋やホテルなどに発注している。

 

 自分が今回仕事で関わった学会では、ランチョンセミナーは13会場あり、それぞれ70個の弁当を事前に用意していた。そしてどの会場でもだいたい2~3人、多くても5,6人しか来なかったらしい。ということは、一会場につき、60数個の弁当が余ったことになる。

 手が付けられなかった弁当は、それぞれのセミナーを主催した企業の人たちが持ち帰ったりしていたが、それでも大量の弁当がその場に残されていた。弁当の消費期限はその日の15時とかで、弁当を作った仕出し屋やホテルも食中毒が出たら困るので、回収に来てそのまま廃棄する。こんなことが日常茶飯事なのだ。だから運営する側も慣れてしまって、それがどれほどもったいないことなのか分からなくなってしまっている。

 

 学会によっては、ランチョンセミナーだけでなく、モーニングセミナーやイブニングセミナーがあって、そこでも食事が提供される。今はコロナ禍ということもあって、ランチョンセミナーのみの学会だったが、おそらくどの学会でも、コロナ前は毎回毎回信じられない量の弁当や食事が廃棄されていただろう。

 

 コロナ禍はリモートワークを促進したが、学会でもオンライン参加を促進した。

 これまでは全国や海外の大学や研究施設から研究者が一堂に会していたが、それが困難になった。オンライン参加の促進によって、たぶん以前よりも弁当の廃棄量は減ったと思う。昨年は学会を中止したところも多かったようだ。

 

 今後もオンライン参加が促進され弁当の廃棄もなくなればいいと思いたいが、そうなると今度は仕出し屋やホテルの仕事がなくなってしまうという問題が出てくる。あちらが立てばこちらが立たず。難しい問題である。