あなたはアナグラムを知っていますか?
アナグラムは言葉遊びの一つです。
アナグラムとは単語や文の文字を入れ替えて、もとの単語や文とは別の意味にさせる言葉遊びのことです。
例えば、タモリと、もりた(森田)。
タモさんは、自分の本名をアナグラムしたものを芸名にしているんですね。
英語ではこういうのもあります。
EDWINとDENIM (Mは逆さにしてWにしています)
ジーンズやデニムを手掛ける企業EDWINは、デニム(DENIM)をアナグラムしたものです。面白いですね。
上の例はWikipediaからとってきました。
他にもいろいろあるので、調べてみてください。
アナグラムは物語にも使われます。
いろいろあるのでしょうが、僕が気づいたアナグラムは『マトリックス』と『ハリーポッター』です。どこに使われているか見ていきましょう!
NEO とONE
『マトリックス』はキアヌ・リーヴス演じるネオ(Neo)が主人公です。
映画でネオは、救世主として人類を救います。
この救世主が、英語ではOneなのです。
Neo(ネオ) と One(救世主)。アナグラムになっていますね。
実際には、oneは「何かの言葉の代わり」として使われるのですが、『マトリックス』では「He is the one. (彼は救世主だ)」というように使われています。
ちなみに、ネオ以外の登場人物の名前にも物語と関連した意味がこめられています。
モーフィアス・・・夢をつかさどるギリシャ神話の神
トリニティ・・・キリスト教における「三位一体」を意味する
Tom Marvolo Riddleと I am Lord Voldemort
『ハリーポッターと秘密の部屋』でもアナグラムが使われています。
それは、ハリーとトム・リドルの対決で使われます。
ハリーは秘密の部屋でトム・リドルに会います。
それまでハリーは、日記をとおしてトム・リドルとやりとりしていましたが、その正体までは知りませんでした。
トム・リドルはアナグラムを使って自らの正体を告げます。
Tom Marvolo Riddle(トム・マールヴォロ・リドル)
I am Lord Voldemort. (私はヴォルデモート卿だ)
確かめてみてください。ちゃんとアナグラムになっています。
彼はヴォルデモート卿の過去であり、現在であり、そして未来だと言います。
トム・リドルは、ヴォルデモート卿の記憶として、日記のなかに生きていたのです。
ソシュールのアナグラム論
20世紀の思想界に大きな影響をもたらした言語学者に、フェルディナン・ド・ソシュールという人がいます。
彼は近代言語学の父として絶大な影響力を持っていましたが、晩年は精神を病んでいました。その時期に行っていたのがアナグラム研究です。
ソシュールは、アナグラム研究の題材として詩を研究していました。
詩人は、自らが詩に使う言葉のなかに、アナグラムによってテーマとなる言葉を潜ませていると彼は考えていました。
彼は、詩人がアナグラムを意図して使っているのか、それとも無意識に使っているのか確かめようと知り合いの詩人に手紙を送るのですが、返答してもらえずアナグラム研究を挫折しました。
詩人はアナグラムを使ってテーマとなる言葉を隠している。
ソシュールのこの考えが正しいかどうかは分かりません。
しかし『マトリックス』や『ハリーポッター』には、まさにこれが当てはまるのではないでしょうか!?
もちろんいずれの作品の著者も詩人ではないですが、物語のカギを握る重要な人物の名前にアナグラムが用いられています。そして、アナグラムによって隠された言葉は、物語の本質を理解するヒントを与えてくれます。
ネオ(Neo)という名前には、救世主を意図するOneが隠されています。
トム・リドル(Tom Marvolo Riddle)という名前には、ヴォルデモート卿の名が隠されています。
『マトリックス』の作者ウォシャウスキー兄弟や、『ハリーポッター』の作者J.Kローリングが、ソシュールのアナグラム論を知っていたかどうかは分かりませんが、僕にはアナグラム論が物語に活かされているように思います。
まとめ
アナグラムは単なる言葉遊びにすぎませんが、著名な言語学者が研究に没頭するほど興味深いものです。
アナグラムを知っておくと、物語をより深く味わえるようになりますよ。
『マトリックス』や『ハリーポッター』以外の作品にもきっと、アナグラムがそっと使われているはずです。
みなさんも自分の見聞きする作品にアナグラムが使われていないか探してみてください。