日本の暗闇を表わした3冊を読む

車上生活を送る人たちのルポルタージュ

道の駅に行けば、だいたい県外ナンバーのキャンピングカーとかバンを見る。そういう、車で旅をしている人たちではなく、車で生活を送る人たちに焦点を当てたルポ。

自分の知り合いにも一人、車上生活を送るのがいる。彼は住所はあるが、人目が気になるから車上で生活している。彼は付き合いにくい人間で、人と関わりたくないという雰囲気を発している。この本でも、人付き合いが苦手な人たちが車上生活を送っている。

車の中で母を亡くしそのまま放置していた、死体遺棄の罪で逮捕された娘の報道を見たNHKの記者が、その後取材のため全国の道の駅などでインタビューをした内容が収録されている。

なんというか、現代日本の抱える闇の一端を明らかにしたという意味では価値ある放送、書籍化だと思うけど、記者ってこんなに図々しいのかと思った。これはと思った車や持ち主を観察し、取材を試み、カメラ撮影をし、時には何ヶ月も生活に密着するって、図々しいな。

車上生活を送る人たちにはもちろん、いろんな事情があって、家賃を払えなかったり、家がゴミ屋敷になっていたり、あるいは夫と一緒に旅した車だからという理由で車上生活を送る。

難しいのは、車上生活を送る人たちは支援を必要としているのかしていないのか、その生活は選択したものなのか、せざるを得なかったものなのか、線引が難しいところだ。

自分の知り合いは、人目が気になるから車上生活を送っている。夜は誰にも見つからないところに車を止めて次の日を待つ。こういう人間は支援が必要なのか必要でないのか分からない。が、支援を自ら求めることはないだろう。日本人には、人に迷惑をかけてはいけないという教えが骨肉に染み付いているから、本当に助けが必要なときでも助けを求めない。それはいいことなのかどうなのか自分には分からない。

あと、ディレクターの、編集での悩みとかも綴られている。どのシーンを放送するのか、カットするのか、葛藤が綴られている。このシーンを入れたいけど、入れると番組の論点が曖昧になるからカットしたり。

まぁ、枠の問題とか方向性の問題とかあるのは分かるけど、車上生活者の様々で複雑な事情を放送では一面しか見せず、解釈の幅を狭めるというのは嫌だなーと思った。これ、本では放送されていない事情とか葛藤が綴ってあるからまだいいけど、番組すべてがそうではないし、そもそも記者が車上生活者のすべてを聞き出せているはずがないし、生活者のほうもいきなり訪ねてきた人間に話すはずもない。こんなこと言い出したらきりがないけど。

記者も悩んでいるように、車上生活が単なる社会現象なのか、それとも社会問題なのかはまだ分からない。が、これは今後大きな問題になる可能性は大いにあると感じた。

 

一時期三万人を超えていた年間自殺者数も、今では二万人ちょっとにまで減っているらしいが、これは自殺者を行方不明者としてカウントすることで、自殺者数を減らしていると何かで聞いたことがある。本当かどうかは分からないけど。

自殺したいと思ったことはなくても、どこか遠くに行きたい、誰も知らないところに行きたい、誰とも関わりたくないとよく思う。そういう人はたくさんいると思う。いろいろとうんざりする世の中だ。

本には、ネットで自殺志願者を募集して、煉炭とかで集団自殺する人たちが出てくる。著者は、そういう人たちともコンタクトをとって取材もしている。なんだか、ふわっといなくなってしまうんだなと思ってしまった。日常の延長に自殺があって、生きることと死ぬことは文字どおり紙一重で。まぁよくよく考えてみれば誰もが紙一重ではあるんだけど。

東横キッズたちに取材したどっかのテレビ局の人が、これから売春に向かう女の子を引き止めていた。売春はダメだと言うが、じゃあどうすればいいかという答えを彼は持ち合わせていたのだろうか。家に居場所がないから東横に来て、仲間とオーバードーズして現実を回避する。彼女たちはどうすれば救われるのか、誰も答えを持ち合わせていない。 

 

世間では真面目とされている人たちが、実は家をゴミ屋敷にしてしまっているというのは興味深い。ゴミ出しについて注意された人が、ゴミを出せなくなりゴミ屋敷にしてしまった、という話も聞く。

ものを片付けられないというのは、片付けられる人からみれば、どうしてそんな事もできないのと思ってしまう。でも、これはためこみ症という一種の病気で、治療が必要なのだそうだ。

人付き合いがなくなり、人を家にあげなくなると、監視の目がなくなりゴミが増え続けてしまう。こういうのいったんたがが外れてしまうと、もうゴミは溜まり続けるのだろう。

特殊清掃に関する本は何冊も読んでいるが、本当に過酷な仕事だと感じる。特に遺体の腐敗が進む夏はきついだろう。感染症の危険があるから全身防護服じゃないといけないし。

それにしても大家が可哀想だ。ゴミの処理代から、修繕費、復旧しても人が入りたがらない、踏んだり蹴ったりだ。そして、この問題はこれからどんどん増えていくだろうな。

 

日本はこれからどうなっていくんだろうな。個人的にはマトリックスのような世界を早く作って欲しいな。仮想現実に移行するという安楽死なら、やってもいいかなと思っている。何にせよ、もう人間そのものにうんざりしてしまっているし、すべての動植物や地球そのものに対して申し訳ないと思っている自分がいる。かといって自殺するほどの勇気もないが。一体、人間は何がしたいのだろう。多くの人が、自分の人生にうんざりしているのではないだろうか。こういう、静かな諦観が上の本のような、車上生活とか自殺、ゴミ屋敷化に繋がっていくのだろう。自分も将来、どれかを引き起こしているかもしれない。