鶴見済『完全自殺マニュアル』と安楽死

前々から読んでみたかった一冊を読んだ。

いろんな自殺の方法が事例とともに紹介されている。

この本は、タイトルからして自殺したい方向けの本のように思えるが、著者の本音はそうではない。

僕の知人に、それを飲んだら平気でビルから飛び降りちゃうほど頭のなかがメチャクチャになっちゃう“エンジェル・ダスト”っていう強烈なドラッグを、金属の小さなカプセルに入れてネックレスにして肌身離さず持ち歩いてる人がいる。「イザとなったらこれを飲んで死んじゃえばいいんだから」って言って、定職になんか就かないでブラブラ気楽に暮らしている。

この本がその金属のカプセルみたいなものになればいい。 P8

このくだりを読んだら分かるように、実は逆張りで、いざとなったら自殺しちゃえばいいと気楽になれるからこそ、生きていけるのだ。これってけっこう大事なことだと思う。セーフティネットっていったらおかしいけど、精神安定剤みたいなものとして機能してくれることを願って、あるいは息苦しさを感じる自身のためにも、この本は執筆されたのだと思う。

人権意識などの高まりから、人間の命が重くなったが、そんなのは嘘っぱちで、人間の命なんて吹けば飛ぶようなチリみたいなもんだ。だからこそ、もっと気軽に生きればいい。そのほうが人生を楽しめる。

そう考えると、安楽死はもっと真剣に議論されるべきテーマだろう。

https://news.yahoo.co.jp/articles/a88d59ffbeaa3f735f777d37a61a777f132df3d1

ヤフーニュースでも安楽死が取り扱われていて、同記事にあるアンケートでは、民意ではないにせよ、かなりの人が安楽死を認めるべきだと思っている。自分も認めるべきだと考える。

もちろん制度として認められると、それを悪用する人間は現れるだろうが、それを考慮しても、上の話と同じで、安楽死という選択肢があることで気楽に生きられるようになると思うのだ。

完全自殺マニュアル』は30年近く前の本でかなりの話題になった本。それだけ需要がある本。その根底には、やっぱり生きることの苦しみ、息苦しさがあるはずで、だからこそこうした本が売れたのだ。同時に、最期にわざわざ苦しんで死ななくてもいいわけで、死はもう少しラフなものというか、カジュアルなものというか、そういうイメージで語られてもいいのではないかと思う。

自分はべつに自殺したいとは思わないし、思ったこともないが、大きな穴を掘ってそのなかで餓死するのもいいなと考えることがある。修行するわけじゃないが、暗闇のなかで、飲まず食わずで干からびて死に、土に還っていきたい。