オードリー若林の『完全版社会人大学人見知り学部卒業見込』を読んだ感想

ブックオフをうろついていたときに何気なく手に取った一冊。110円。

感想。素晴らしい!本当に、素晴らしい!

えー!まじで、オードリー若林の文才がこんなにすごいとは知らなかった。自身の人見知りを、こんなに鮮やかに表現できる人、他にいるのだろうかと思うくらいの凄さ。

そういえば、何年も前に、知り合いと本屋で待ち合わせしてたときに単行本のほうを立ち読みしてて、その時も面白いと思ったのだった。でもそのときは購入せず、こうしてブックオフでふと手に取るまで、若林の文才のことなど忘れていた。

若林はお笑い芸人として社会に出て人見知りが薄れていったようだが、自分は逆で年を取るにつれて人見知りになっていっている。人見知りになるというより、他人の面倒くささと醜さにあてられ人付き合いが年々嫌になっていっている。そういうのもあって、このエッセイがより一層染みてくるのかもしれない。

エッセイのなかで何度も、自身のネガティブについて綴られているが、若林ほどではないにせよ、よく分かる。嫌なことがあって落ち込むと、自分を責めてさらに落ち込むという負のループが始まるの、よく分かる。そうやってずっと反芻するんだよな。でも、若林はそこから上手く脱出する方法を見つけ出すだけでなく、こうしてネタにまで昇華してしまうんだからすごいと思う。

若林の自意識過剰による生きづらさも共感する。自意識が過剰でスタバでグランデを頼めないらしいが、自分は自意識過剰でバイオリンを弾けない。家族の前にでさえ弾けない。家に一人でいるとき、外に音が漏れないよう窓を全部しめてから弾く。「今度聴かせてよ」と言われるのを恐れている。分かってるんだけどなぁ、誰もそんなこと気にしてないことくらい。

海外に行って気が大きくなって、でも帰国すると元に戻るのも分かる。

帰りの飛行機が羽田に着いた時少しあけすけになったぼくの気持ちを恥と世間体と見栄の向かい風が大きく減速させて地面に停止させた。

 

オードリーのラジオは聴かないが、ドームで収録するのが話題になるくらい人気なのは知っている。彼の番組のリスナーに猛烈に投稿するハガキ職人のことも書いてあった。若林はプロになれると応援するのだが、「人間関係不得意」として上京するも地元へ帰っていった。

あー、難しいよなぁ、世の中には才能を持った人はいくらでもいる。でも、人間関係不得意クンみたいに、お笑いでどんなに才能があっても他が不得意のせいでそれで飯を食えない人は星の数ほどいるのだろう。上がり症だから歌手になれないとか。

若林も、人間関係は不得意なのだろうが、それでもどうにかこうにか粘ったから今がある。一方、人間関係不得意クンはお笑いで金を稼げなくても、ハガキ職人としてお笑いを楽しんでいるからそれはそれでいいともいえる、本人が満足しているのであれば。若林はやっぱりプロになってほしいようだが。

 

それにしても、ハズレだなと思うエッセイが一つもなかった。本当に、一つもなかった。世の中にはゴーストライターがいるらしいが、若林は自分の手で言葉をひねり出している。句点の付け方が独特だから、すべて本人なのだろう。そこ、「。」じゃなくて「、」じゃないかなぁというところがたくさんある。

なんだろうな、救われるとか勉強になるということはなかったんだけど、素晴らしい一冊だった。