美術手帖1988年11月号
特集はサイケデリック
サイケデリックとは何か
精神科医のハンフリー・オズモンドによって、幻覚剤の通称「サイキデリクス」という言葉が生まれた。幻覚剤によってもたらされる視覚的、聴覚的な感覚の変容をサイケデリックという。
幻覚剤の影響によって、さまざまな幾何学パターンが生まれる。そのパターンはフラクタルと呼ばれる自己相似のかたちである。
サイケデリックは、1960年代半ばのアメリカ西海岸のヒッピー文化とともに隆盛を迎えた。
頭脳改革
上の写真は、ブレイン・ジムという施設で新たな知覚体験を行っている様子を伝えている。
ヘッドホンからのパルス音とゴーグルのフラッシング・ライトが、音楽とミックスされて脳に伝えられる。
それによって、まぶたの裏側に多種多様な抽象パターンが示され、体験者はインナービジョンを体験する。
シャーマンや巫女は、薬物と特殊な儀式によってインナービジョンを体験する。その体験が神話を紡ぎ、彼らの世界に秩序を与えている。
いや、シャーマンや巫女のいる未開社会に限った話ではない。
この世界に秩序を与えているものは、誰かのインナービジョンが具現化されたものだ。小説や絵画、音楽といった芸術に属する部類のものだけではなく、仮想通貨や人工知能、資本主義といった類のものまで人間の想像が生み出したと思うと、創造的な人間が体験する世界を自分も体験してみたいと思うのは不思議なことではない。
しかし、オウム真理教の麻原みたいに、人間のそういった欲につけこんで多くの人を洗脳し巨大な暴力をつくり出そうとするやつもいるから気をつけなければいけない。