人はなぜに変身したいのだろうか

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 美術手帖1995年6月号。特集は変身。

 

 人はどうして変身したいのだろう?

 

 変身っておもしろいテーマだけど、僕はこれについてあまり考えたことがない。

 う~ん、どうして変身したいのか?

 日本では、コスプレが流行り、戦隊シリーズが流行り、テレビには女装した人が普通に出ている。

 そういうことを思えば、日本人は変身に対する欲望が大きいのかもしれない。

 

 変身とは日常から非日常へのジャンプすることだと思う。

 とすれば、古来より変身は日常的に行われていたのだろう。

 シャーマンや巫女も一種の変身だし、能や歌舞伎もその類に入る。

 

 人は自分自身が他者へと変身することで、自分自身を知るのかもしれない。

 

 変身は何かになりたいという欲望だ。とすれば、大好きなアニメのキャラや仮面ライダーなど、自分があこがれる者になりたいというポジティブな欲求がある。

 

 しかしフランツ・カフカの『変身』は、それとは正反対の不条理な変身だ。

 主人公はある日突然、巨大な虫に変身してしまう。家族には気味悪がられ部屋に閉じ込められる。そうしてほったらかしにされ無残な死をとげる。

 

変身 (新潮文庫)

変身 (新潮文庫)

 

 

 このような不条理さは物語だけの話ではない。

 

キラキラネームに生まれて 「王子様」から改名、今までの人生をリセット(弁護士ドットコム) - Yahoo!ニュース

 

 赤池肇くん(18)は、生まれたときに「王子様」となづけられた。幸いにも、名前が原因でいじめられることはなかったそうだが、偽名を疑われるなど嫌な思いを何度もしたらしい。

 

 名が与えられて初めてモノが存在するという考え方のもとでは、改名するまで彼は「王子様」として存在していたわけだ。

 彼は18年間もそのような不条理さを味わっていたことになる。彼は、『変身』の主人公と同じようにある日突然不条理な存在になってしまったのである。

 

 ありがたいことに日本の法律では、15歳になれば自分の意志で名前を変えられるようになっている。

 

 彼は「今までの人生をリセットし、新しく始めていく」ということで「肇(はじめ)」に改名した。

 

 彼は新たな存在に変身した。いい人生を歩んで欲しい。