ものすごく分厚い本なんだけど、夢中になって読んだのであっという間に読み終わった。高校野球ファンとしてはとても面白い一冊だった。
駒大苫小牧の監督といえば、香田監督。
高校野球のなかでも伝説の試合として印象深い2006年夏の決勝、
この試合はハンカチ王子こと斎藤佑樹投手率いる早稲田実業が初優勝したのだった。
2004年まで、深紅の大優勝旗は、北海道どころか東北より北に行ったことがなかったのに、2004年、2005年と二年連続で優勝旗が北海道に行ったというのはやっぱりとんでもないことなのだ。そして2006年も、あと一歩のところだった。
北海道民はこの優勝、優勝、準優勝のことを「2.9連覇」と呼んでいるらしい。
本書は、その駒大苫小牧を率いた香田監督の就任から退任までを非常に細かく描いている。香田監督という人はあまりにも真っすぐで大人の論理が通用しない人だったので、学校や選手とのあつれきを生み相当苦労されたようだ。でも、その真っすぐすぎるところが、「2.9連覇」につながる要因だったともいえる。
一番印象に残ったのは、あまりにも勝つと孤独になるのだということ。
これは高校野球だけの話ではなくて、どんな分野でも成功者はみな孤独だと言われるからよく分かる。
本人がどんなに謙虚でも、まわりが勝手に壁を作ってしまう。あるいは、成功者に嫉妬する者がよからぬ噂を流して孤独にしてしまう。
香田監督が一番楽しかったのは初優勝のときだけで、それ以降は勝つたびに憂鬱な気分になったという。寄付金やらなんやらを集めなきゃいけない学校側は「またか・・・」という反応をするので、監督自身が「早く負けてくれないかな・・・」と思ったこともあったという。
最終的に監督と学校側に深い溝ができてしまい、監督は2007年に解任というかたちで辞職することになった。これだけの偉業を成し遂げた人に対して、学校はずいぶん冷たい。
人は、ちょっとでも成功した人に対して、すぐ否定したりひがんだりする。
そうやって成功者を妬むのではなくて、成功者から何かを学ぼうするような人間になりたいものですね。