①~④までは消費者の視点から書いていたが、今回は労働者の視点から書いてみようと思う。
経済学者ケインズは、技術の進歩によって機械が人間の労働を代替し、労働は一日三時間程度になると述べた。
だけど実際にはそうなっていない。みんな朝から夜まで働いている。それはどうしてなんだろう?
[結論] 資本主義によって競争が刻々と激しくなっているから。
これについて具体的に書いてみよう。
1 資本主義の基本的な仕組み
資本主義社会では資本家と労働者の二種類がある。
労働者は自らの労働力を資本家に渡す。
資本家はその対価として賃金を労働者に渡す。
資本家は得られた利益の一部を投資する。
利益の一部はたとえば、より生産性の高い機械を買ったり、新たな店をオープンしたりするのに使われる。それによって資本家はさらに大きな利益を得る。
利益を出す。投資する。さらに利益を出す。
資本主義はこの繰り返しで、利益をどんどん増やすことができた企業ほど成長していく。
2 自己増殖システム
『資本論』を書いたマルクスによれば、資本主義は自己増殖のシステムだ。
資本が雪だるま式に増えていくことで、システムは巨大化していく。
資本主義システムはちょうど思春期の青少年のようなものであって急激に成長する。
思春期の青少年がごはんをたくさん食べて成長していくように、資本主義期のシステムは市場の提供する「パイ」を取り込んで成長していく。
市場はパイをどんどん提供する。
でもいずれ、一国家市場での提供には限界がくる。
するとどうなるか。
グローバル化するのだ。
グローバル化することで市場は一つの国から世界全体になる。
3 日本選手権から世界選手権へ
グローバル化することで市場が日本から世界に広がる。
たとえば市場が一つの国で収まっているとき、トヨタのライバルは日産や三菱、スズキなどだった。
しかしグローバル化した今、ドイツのフォルクスワーゲンやアメリカのGM、フランスのプジョーもライバルになった。
日本選手権が世界選手権になったのだ。
日本選手権が世界選手権になれば当然競争は激しくなる。
それに応じて労働者に求められるものが多くなる。
かつて上司の意見に従っていれば良かったのが、今では上司の意見に従いつつ新しいアイデアを出し、外国人と問題なく英語でコミュニケーションをとれなければならないようになっている。
4 異種格闘技戦へ
人工知能が進歩して単なる世界選手権ではなくなりつつある。
トヨタのライバルは今まで自動車企業だけだった。
しかし今では、人工知能を介してあらゆる業種が結びつこうとしている。自動車とは関係のない企業のアマゾンがトヨタのライバルになった。
単なる世界選手権ではなく、異種格闘技の世界選手権になりつつあるのだ。
これによって、労働者は人工知能を操る能力も必要になってきた。
5 まとめ
資本主義という自己増殖システムが世界レベルに市場をおしひろげ、企業は異種格闘技の世界選手権に参戦せざるをえなくなっている。
当然その負担は労働者にのしかかり、難易度の高い仕事をこなさなければならなくなる。これがぼくたちがどんどん忙しくなっている理由である。