子どもが勉強よりも遊びを優先するべき科学的理由

 

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子どもの仕事は勉強ではなく遊びである

 

 昨日『日経サイエンス』を読んだ。

特集は、子どもの発達についてで興味深い記事がたくさんあった。

そのなかでも面白かったのが「遊びの必要性」についての記事だった。

 

 親が子どもに言う言葉でもっとも多いのは、「遊んでないで勉強しなさい!」という言葉だろう。いつまでも遊んで勉強しないと、いい学校に入れない。そんな無駄なことしてないで、家に帰って勉強しなさい。

 

 近頃の子どもは聞き分けがいいのか、親の言葉に素直に従っている。

 これはアメリカのデータだが、1981年から1997年にかけて、子どもの自由遊びの時間は四分の三にまで落ちたという。ここでいう自由遊びとは、系統だったルールのない遊びのこと。野球やサッカーのようなルールのある遊びではなく、子ども独自のルールにもとづいた遊びのことを、自由遊びと呼ぶ。

 自由遊びの時間が減った原因は、塾や習い事のためだ。親が、子どもの将来のためにと、遊びよりも知識や能力をつけることを重視している。

 

 しかし自由遊びはけっして無駄な営みではないことが科学的に明らかにされつつある。

 自由遊びには、ストレス緩和、創造性の発達といった大きな利益があることが分かった。

 

 ある実験によれば、自由遊びをした子としていない子を比べると、自由遊びをしていた子の不安レベルが減少することが分かった。

 

 また、べつの実験では、たとえば子どもどうしで戦闘ごっこをした場合、情動反応と社会的発達にかかわる「高位」の脳領域における神経の発達が促されることが明らかになった。

 

 野球クラブや音楽の習い事なども、子どもにとってはある意味で遊びである。

 しかし、野球のようなルールのある遊びや大人の指示に従う音楽の遊びよりも、子どもの好きなようにやらせる自由遊びのほうがはるかに価値があると心理学者は言う。

 自由遊びは、子どもが自発的にルールをつくりそのなかで好きに遊ぶので、創造性がより養われるというのだ。

 

 また、こうした遊びの経験の有無が将来にまで影響することが報告されている。

 アメリカで42年にわたって6000人を追跡調査した結果、子どものころにルールのない空想力にまかせた遊びを経験したことがないと、周囲に適応した幸せな大人に育ちにくいことが分かった。

 

 自由遊びという子どもの独自性にまかせる遊びは、独創力や創造性を養い、周囲との協調性を育む。

 これからの社会は、以前にも増してもっと混沌とした何が起こるか分からない世界になる。そうした世界を生き抜いていくために必要な資質を、遊びはもたらしてくれる。

 

 日本やアメリカの親は、子どもの将来を思って塾や習い事に通わせる。

 しかし、それが逆に子どものためになっていないのだ。親が子どものためにすべきことは、勉強を強制することではなく、友達と自由に遊ばせることなのだ。

 

 子どもの仕事は勉強でなく、自由に遊ぶことなのだ。