ホームレスは普段何を食べているのか

 

ヤフーニュースを見ていたら、ホームレスの食事についての記事が載っていた。


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 懐かしいなぁ。

 

 僕は大学生のころ、自転車で日本をブラブラしていたのだが、東京の多摩川で「缶太郎」と名乗るおじさんと仲良くなって、一ヶ月彼の「家」に居候していたのであった。

 

 缶太郎は、街中の缶を拾い集めてお金をもらっていた。

 どれだけお金を得ているのか詳しくは知らなかったが、嗜好品としてたばこを買うぐらいの余裕はあったようだ。

 そんな彼は、「俺はビスケットだけでいいんだ」と言って、ココナッツサブレを毎日食べていた。そしてときどきパックのごはんを食べていた。

 

 ココナッツサブレやパックのごはんの他に、パンも食べていた。ヤフーの記事にあるようなキリスト教系の団体がやっているパンの配布に行って、そこでもらっていたのだ。

 僕も一回缶太郎についていって賞味期限の切れそうなパンをもらった。アウトレットで売ってそうな大量のパンの詰め合わせをもらった。

 そこに行って驚いたのが、ホームレスといってもみんな身なりがいい人たちばかりだったことだ。季節は秋にさしかかるころだったが、僕はずっとビーサンで旅していて靴を履いていなかった。一方、ホームレスの人たちの多くが、キレイなスニーカーを履いていた。

 

 缶太郎の「家」の横には地元住民が作っているお花畑があって、そこの管理者と缶太郎は仲がいいようだった。その管理人はときどき缶太郎のために、カレーやら煮物やらを大量に作って持ってきていた。

 しかし缶太郎は好き嫌いが激しいのか、それにはほとんど手をつけなかった。代わりに僕が毎回食べた。おいしかった。

 

 傍から見た缶太郎の食生活はあまりにも乱れていたけど、彼の身体はがっちりしていて健康そのものだった。

 そのころ世間では蚊が媒介するデング熱が流行っていて、メディアが盛んに注意を呼びかけていたけど、缶太郎にはおかまいなしだった。「家」のまわりは蚊が飛び回っていたけど、デング熱にかかる気配はなかった。そのうちメディアの過熱のほうが収まっていった。

 

 不思議なことだが、人間はある程度過酷な状況に身を置いているほうが健康を維持できるらしい。缶太郎を見ていてそう思った。

 普通に暮らしている人が、缶太郎のような食生活をすればすぐに病気になるだろうけど、過酷な環境で暮らす人なら、多少食生活が乱れても身体は逆にシャキッとするものだ。

 

 人間の身体はよくできている。