遺跡発掘バイトは思いがけない恵みを与えてくれた

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 6月から始めた遺跡発掘バイト。

 遺跡発掘の仕事に応募する段階では、金づちで土をコツコツと叩いて土器とかはにわを発掘する作業をイメージしていた。自分は考古学の知識がまったくないので、このバイトを通じて歴史に対する知的好奇心を満たそうなんてことを考えていた。

 

 バイト初日。

 いざ現場に行ってみると、街中でよく見る工事現場みたいな感じだった。作業は極めて単純だった。考古学の先生の指示に従って、地面をツルハシで何センチか下げる。その後、手ガリやスコップを使って、地面を薄く削って土の色がよく見えるようにキレイにしていく。この繰り返しだった。

 

 地面を何センチか下げる、と書くと単純で楽なように思えるが、実際はとんでもなくきつい作業だった。ツルハシを振り始めるともう汗がとまらない。時期が夏だからというのもあるけど、かなりしんどかった。

 「これは何日ももたない・・・」

 初日は、「あと1時間頑張ろう」、「あと30分だけ頑張ろう」と思い続けながら、やっとのこと乗り切った。

 次の日は当然のように全身筋肉痛で、これが一週間くらい続いた。

 

 しかし人間というのは奇妙なもので、慣れてしまうとどうってことはなくなる。

 もちろんはてしなくしんどいのだけど、そのしんどさに慣れてしまう。だんだんそのしんどさが快感になり、仕事を楽しめるレベルになっていった。

 一日中ツルハシを振り、起こした土をかき集めて運んでいると、イヤでも筋肉がついてくる。僕は脂肪も筋肉もなかなかつかない華奢な身体で、ほっそりとした腕がコンプレックスだったのだが、発掘バイトをしたおかげで、日に焼けてこんがりと黒光りしたそれなりに太い腕ができあがった。嬉しい。

 太ももも以前より5センチくらい太くなって、筋肉でタプタプするレベルになった。嬉しい。

 

 これだけ仕事がきついと、ちょっとでも体調がすぐれない状態で仕事に臨めば絶対にぶっ倒れてしまう。そんなことにならないように、以前より健康に気を配るようになった。風邪をひかないよう、リンゴや多くの野菜を食べている。午後10時には寝て、7時少し前に起きる。こうして、以前よりもタフで夏の暑さにへばらない身体が構築されていったのである。

 

 発掘バイトは、思ったほど歴史の知識が身につかなかったが、思いがけず筋肉がついた。毎日過酷だが、その分充実している。

 

 仕事も人生も、いつも思ったとおりにはいかないが、いつも思いがけない方向へ発展していく。今後もそういうのを楽しんでいけたらいいと思う。