googleは今後、製薬会社に転身するだろう

ガルヴァーニが開発を目指すのは、体内の神経信号をモニタリングできる埋め込み式の小型機器だ。さらに、こうした機器を使用することにより、関節炎や糖尿病、ぜんそくなど多くの慢性疾患に見られるインパルス(活動電位)の不整や変化といった問題にも対処できるようになるかもしれない。慢性疾患によって引き起こされる神経系信号の異常を、電気インパルスを使って修正するわけだ。 

完成すれば、この生体電子工学機器は、錠剤と同じほどのサイズになり、体内に埋め込まれることになるだろう。一度限りの手術で効果が何十年も続き、定期的な投薬治療の必要がなくなる可能性もある。ただし、機器に動力を供給し続け、体内で何年もの間、確実に機能できるようにしなければならない、という課題もガルヴァーニは抱えている。

 

wired.jp

 

 今、ユヴァル・ノア・ハラリの21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考を読んでいる。この本の「自由」という章で、アルゴリズムと自由の関係が述べられている。

 

 私たちは自分の感情に従って行動しているし、理性によって物事を判断していると思っている。私たちは私たちが自分の意志で決断できていると思う時、自分が自由だと感じる。

 ユヴァル・ノア・ハラリは、近い将来、自分の感情や意志よりもアルゴリズムを信頼し、アルゴリズムの決定を優先するようになるかもしれないと述べている。

 

 現実では実際にそれがすでに起きている。

 たしか名古屋のタクシー会社だったと思うが、AIを使った運行サービスを開始したという。

 どこに、何時に行けば、客を効率的に拾うことができるか。

ベテランはこれまで、自分の経験によってそれを判断し、新人よりも客を効率的に拾い利益をあげていた。AIの導入にベテランは懐疑的だったが、いざ導入してみると、ベテランの勘よりもAIのほうがはるかに効率的に客を拾うのだった。

 

 google創薬ベンチャーを立ち上げたし、多くの製薬会社に投資を行っている。

 この動きは今後さらに加速していくだろう。

 冒頭にあるように、googleはバイオ電子薬を発明し医療に貢献しようとしている。錠剤ほどの電子薬を体内に投下することで、さまざまな疾患を治療する。あるいは、がん細胞化しそうな細胞を未然に切除するなどの予防も行うようになるだろう。そのような未来が実現されれば、医師や病院などが今後不必要になるかもしれない。

 

 ここだけみれば、googleはすばらしい事業を行っていると思うかもしれない。

 しかしこれは表向きの理由だと僕は思う。なぜgoogleは製薬会社に投資するのか。

 

アルゴリズムをバイオメトリックセンサーに接続すれば、アルゴリズムはそれぞれの場面が心拍や血圧や脳活動にどう影響したかを知ることができる。たとえば私たちがタランティーノの『パルプ・フィクション』を観ているときに、男性間の性的暴行の場面でほんのかすかな興奮を覚えたことや、ヴィンセントが誤ってマーヴィンの頭部を撃ってしまう場面ではやましそうに笑ったこと、ビッグ・カフナ・バーガーについてのジョークがわからなかったのに、間抜けに思われたくなかったので笑ったことに、アルゴリズムは気づくかもしれない。『21 Lessons』P79

 

  googleが本当にやろうとしていることは、これまでと同様にデータを集めて利益を得ることだ。ただし、これからは私たちの体内に文字どおりダイレクトに侵入してデータを集める。

 電子薬は病気の治療や予防を名目として使用されるだろう。だがしかし、それは個人のデータの収集としても使われる。どんなときに喜び、どんなときに悲しみ、どんなときに興奮したか。心拍、血圧、脳活動のバイオデータを収集し、個人の嗜好に沿った商品が広告としてあなたの目の前に表示されるだろう。友人や恋人、家族の誰よりも電子薬、すなわちgoogleはあなたを理解している。あるいは、監視している。

 

 それはジョージ・オーウェル一九八四年 (ハヤカワepi文庫よりもさらにディストピアである。

 『1984年』では、テレスクリーンと呼ばれる双方向のテレビによって行動が監視されている。生活はすべて監視されている。だがしかし、主人公のウィンストン・スミスはひそかに日記をつけ思考犯罪を犯している。恋人のジュリアは表向きは党の方針を熱心に信奉しているように見せかけて、じつはその方針に疑問を抱き、ウィンストンと交流を重ねる。

 

 電子薬が完成すれば、ウィンストンやジュリアのようなことはもはやできないだろう。

 『1984年』では、生活が監視されているとはいえ、死角があった。「テレビ」は、「遠い」を意味する「テレ」と「見る」を意味する「ヴィーシオ―」というラテン語に由来する。つまり、テレビは遠くから観ているものだ。電子薬は違う。それは私たちを内側から観ている。

 

 犯罪を犯したウィンストンは拘束され、拷問をうけることになる。そこで党の方針に反対する思考は矯正され、党を愛するようにさえなる。

 電子薬が完成すれば、わざわざ拷問して矯正する必要はなくなる。私たちが気づかぬ間もなく、血流や脳の電子回路を「治療」という名目で矯正するだろうから。電子薬はだから警察でもあり、精神病院でもある。

 

 データや情報が金になるこの時代で、googleはすでに覇権を握っているといってよいが、今後人間の身体からダイレクトに情報を得ることでGAFAと呼ばれる四天王から頭一つ抜け出すかもしれない。googleが未来のビッグブラザーになる可能性は十分にある。