青い鳥が逃げていった

今日家に帰ったら、母親が「セキセイインコが逃げた」と報告してきた。

自分にはなついていなかったし、特に興味もなかったので「あ、そう」と感情のない反応になった。あの青い鳥は一体何年前から家にいたのか知らないが、数年は家にいた気がする。母親はけっこう手厚く育てていたので、ちょっぴり悲しんでいたような気がする。「明日は雨が降るからたぶん死んじゃうと思う」

青い鳥は、半年前まで黄色い鳥といっしょに飼われていた。黄色い鳥は半年前に死んだ。青い鳥は黄色い鳥をいじめるので、母親は一つのカゴを半分に分けて隔離していた。青い鳥はオスで、黄色い鳥はメス。隔離される前は一緒だったので、黄色い鳥はよく卵を産んでいたらしい。青い鳥は、ちょうど小学生の男の子が好きな子にちょっかいをかけるような感じで、黄色い鳥に接していたのかもしれない。青い鳥は、隔離された後も黄色い鳥にちょっかいをかけようとしていた。

黄色い鳥が半年前に死んで、青い鳥は元気をなくしたらしい。母親は、そんな青い鳥のために、天気のいい日はベランダや窓際にカゴを置いていた。そしたら、スズメたちが近くの電線にとまるようになって、青い鳥とチュンチュンやりとりするようになった。あっちがチュンチュン鳴けば、青い鳥がピヨピヨ鳴いていた。

今日青い鳥が逃げていった。相棒はもういないし、外には友達がいる。やっぱり外のほうがよかったのだろうか、あるいは夜の寒さが身に染みてやっぱり家に帰りたいと後悔しているのだろうか。

明日は雨が降るらしい。母親は、鳥のために電熱器を用意し、カゴの中が常にあったかくなるようにしていた。こまめに掃除し、水やエサがきれないように配慮していた。数年もそのような生活を享受していた青い鳥が、外の環境に耐えられるとは思わない。明日どこかで野垂れ死ぬだろう。

青い鳥は何を思うだろうな、それでも外に出て良かったと思うだろうか。メーテルリンクの青い鳥のように、幸せはすぐそこにあったと思うだろうか?いや、そことはどこなのだ?家の快適な環境か、あるいは外にいる仲間たちか?いずれにせよ、青い鳥は明日黄色い鳥のもとへ行く可能性が高い。もしかしたら、黄色い鳥に会いたくて巣立っていったのかもしれないな。