『進撃の巨人』ロスに陥っている

アニメ『進撃の巨人』87話まで観終わった。完結編は2023年に放送されるようだ。遠いな。ロスに陥っている。漫画のほうはすでに完結していてそれは読んでいるから結末は知っているけど、物語は複雑で重層的だから一度読んだだけでは理解しきれないところがあって、それをアニメで補完していった感じ。とはいえアニメはマンガの単なる補完ではなくて、動きがあるからこそより楽しめた。そしてアニメのおかげでより『進撃の巨人』を理解できた。

最初単なる人類vs巨人の話だと思って読み始めたが、そういう構図だけで終わる話だったらここまではまらなかったと思う。そういう構造の話ならいくらでもあるわけだし。実はそうではなくてもっと深くて複雑な構造の世界があって、敵だと思っていた者が実は敵ではなくて、仲間だと思っていた者が仲間ではなくなって、正義が視点を変えれば正義でなくなって、しかし誰もが自分にとって大切な人を守るために心臓を捧げている…苦しい世界。いやおうなしに考えさせてしまう作品だった。

進撃の巨人』から教育が語られることはないけど、この作品から教育の力を感じた。マーレの人たちはパラディ島の人を悪魔だと教育され、それによって同じエルディア人どうしで殺し合いする羽目になる。でも、ガビやファルコが実際にパラディ島で生活するなかで、パラディ島の人も自分と同じ人間、壁の中も島の外も変わらないのだと気づいていく。ガビはそれまでパラディ島の悪魔の子を殺すことで名誉マーレ人になれると教え込まれていて、虐げられる自分たちエルディア人の生活を向上させるためにサシャなどを殺した。それがパラディ島の生活、人とのふれあいを通じて、自分自身が悪魔の子だったんだと気づく。教育ってのはなんなのだろうね?ここでは教育のおぞましさがしっかり描かれている。

現実に巨人はいないけど、『進撃の巨人』の描く世界は現実とも深くつながっていてだからこそこれだけ世界中の人の心をえぐっているんだろう。一人の人間からこれだけの物語が生まれるってのは奇跡だなと思う。