【テーマ】人間のために存在するはずの国家なのに、国家のために人間が存在している
ように思われるのはどうしてなのか
こんばんは。
昨日はプラトンの『プロタゴラス』をもとに、人間とはどのような存在なのか、国家はどうして生まれたのか考えました。
人間のために国家が存在するはずなのに、戦時中や最近の政治家の発言は国家のために人間が存在しているかのような物言いです。
どうしてこのような逆転が起きたのか考えたいと思います。
1 主人と奴隷の弁証法
答えのない世界に立ち向かう哲学講座――AI・バイオサイエンス・資本主義の未来という本を読んでいたら、主人と奴隷の弁証法について書いてありました。
著者の岡本裕一郎さんによれば、弁証法とはそれ自身が、それ自身の内部から、それ自身の反対のものへと逆転することです。
そして主人と奴隷の弁証法とは以下のとおりです。
主人が奴隷に物をつくらせて、その物を主人が享受する。
着目すべきは、主人の生存が奴隷の労働によって支えられている点です。
ということは、主人が「奴隷の奴隷」になっているということです。奴隷がいなくなると、主人は生存できないわけですから。
逆に考えれば、奴隷のほうは主人の生存を握っているわけですから、「主人の主人」になります。立場が逆転したわけです。
本書ではこの図式を人間とAIに当てはめていますが、ここでは人間と国家に当てはめて考えます。
2 人間と国家の弁証法
人間は最初、他の動物のえじきになり絶滅の危機にあった。
それを見かねたゼウスが人間に「いましめ」と「つつしみ」を与えたことで、人間は互いに友愛の絆を結び国家を運営できるようになった。
プラトンの著書『プロタゴラス』のなかで、プロタゴラスは以上のように話しました。
国家は、他の動物からの脅威を防ぐためにつくられた。人間のために国家は存在する。
ここで「最初の人間」について考えてみたいと思います。
最初の人間とは、フランスの思想家ジャン・ジャック・ルソーの考えだしたモデルです(実在したかどうか分かりません)。
ルソーが言うには、最初の人間はまったく個人で独立した存在でした。たまに誰かと交わったりすることがあっても、すぐに離れました。
最初の人間はすべて自分で自足しました。だから他者を必要としません。こういう状態であれば、人は争いを起こさないし、政治の不正もないでしょう。ルソーはこういう状態を理想としました。
ルソーは文化や文明が人間を堕落させたと考えました。
まぁでもこれでは子孫が続いていきませんから、男と女が一緒になるとします。こうして社会が生まれます。
社会では必ず分業が生まれます。男は外へ狩りに、女は内で家事や子育てというふうに。仕事や役割を分けたほうが効率がいいですから分業は必ず進展します。
国家は分業なしには成り立ちません。
多くの人が、大工や教師や政治家など仕事を分業することによって国家は維持されます。だから自分が米や野菜をつくらなくても、家を建てなくても、食べ物は手に入り家に住めるのです。お金を払えば食べ物や家は手に入ります。
逆にいえば、分業システムに頼らなければ生きていけなくなったということです。
国家に頼らなければ生きていくことができなくなったわけです。
主人である人間のために、奴隷としての国家がつくられました。
しかし分業がすすみ国家が人間の生存を握るようになったことで、国家が「主人の主人」となったわけです。
こうして人間と国家の立場が逆転します。
3 人間の未来
答えのない世界に立ち向かう哲学講座――AI・バイオサイエンス・資本主義の未来で岡本さんは、AIが生産を担う社会が訪れた場合、人間はAIなしに生きていくことができなくなると言います。
仮にAIが自律性を持てば、いつまでも人間の便利な道具、奴隷にとどまらない可能性がある。人間がAIの道具、奴隷になってしまうかもしれません。
僕としては、国家にはある意味で自律性があると思います。
資本主義は自己増殖のシステムで利益⇒投資⇒利益の繰り返しです。この自律的なシステムに人間は組み込まれています。
人間の未来は次の二つがあると僕は考えます。
①アップデートされた人間が登場する
②絶滅する
国家の維持に人間が必要なら、技術によってアップデートされた人間(頭がよく、病気に強い人間)が登場します。
人工知能によって国家が維持され人間は必要ないと判断されればおそらく②の運命をたどると思います。
参考文献
答えのない世界に立ち向かう哲学講座――AI・バイオサイエンス・資本主義の未来
- 作者: 岡本裕一朗
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/11/06
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
- 作者: J.J.ルソー,Jean Jacques Rousseau,本田喜代治,平岡昇
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1972/01/01
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 25回
- この商品を含むブログ (26件) を見る